読者に勇気と感動!ヤングケアラーに毒親…過酷な環境を強く生きる『花とゆめ』名作の主人公たち
■『ゴールデン・デイズ』が描く、過保護な母との関係
続いては2005年から2007年まで連載された高尾滋さんによる『ゴールデン・デイズ』。 これは、過保護な母を持つ男子高校生・相馬光也が入院中の曾祖父の危篤の連絡を受け病院に行ったところ、地震にあい約70年前の東京にタイムスリップするという話。 最近、巷で「毒親」と言うワードをよく耳にする。毒親とは、子どもを支配したり傷つけたりして、子どもにとって「毒」になる親のことだが、同作の1話で描かれた光也と母親の関係がとにかくつらい。 主人公の光也は14年前に誘拐された過去を持ち、それが原因で母が異常なほど過保護になってしまった。彼は趣味のバイオリンでの留学も夢見ていたが、母親からはそれに猛反対されてしまう。 一口に「毒親」と言いきってしまうには深い事情があるが、自分らしく生きられず親の支配下にある状況からは解放されてほしいと願ってしまう。なお、1話では光也はタイムスリップした大正時代で「記憶喪失の自身の曾祖父」として生活し、現代で危篤状態の曾祖父の願いを叶えようとするというファンタジーの展開になる。
■涙なくして読めない『はみだしっ子』の子どもたち
さて、『花とゆめ』最初期の代表作といえば1975年から1981年まで連載されていた三原順さんの『はみだしっ子』シリーズがあげられる。 同作は、それぞれの複雑な事情で家を出た幼い4人が、心に闇を抱えたまま放浪する物語。 4人のリーダーであるグレアムは幼少期に父親の乱暴で右目を失明してしまう。さらに父の言葉によって伯母を亡くし、それを自分のせいと思い込んでトラウマをかかえている。このほか、幼少期に母親から棄てられたと悟るアンジーや、地下室へ幽閉されていたサーニン、酒乱の父親を持つマックスと、いずれも親に捨てられる、もしくは自身で親を捨ててきた子どもたちだ。 彼らは初登場時ではたった7歳と5歳。あまりに過酷な環境の中、そんな彼らには生きる上での選択が多く立ちはだかる。 「親という名を持った人間じゃなくホントに愛してくれる人」を求める彼らがけなげに生きていく様子はつい応援したくなってしまう。 重すぎる環境の中を必死に生きる『花とゆめ』の主人公たち。恋愛モノやファンタジー作品以外にも、人間の心の根幹に迫る魅力的な作品は多くある。
折田マカダミア