東京・青ヶ島、人口わずか166人も「絶景だしネットがあるから退屈しない。慣れれば本当に最高」離島への移住ブーム再来か
■リモートワークが離島への移住を後押しか
佐々木加絵さんは、島のための「移住体験プログラム」に取り組んでいる。移住を考えている人達などに、実際に下宿してもらい、民宿の仕事を手伝ってもらいながら、島を知ってもらう。今後は住む場所や仕事が足りない悩みを解決するため、住みながら働けるリモートワーカーやマルチワーカー向けシェアハウスを計画中だ。 ライフスタイルの変化も、追い風になっているようだ。作家でジャーナリストの佐々木俊尚氏は、「都内でリモートワークしている人でも、オンライン会議して、Netflixを見て、Amazonで買い物して、Uber Eatsで食事して、24時間家にから出ない人が結構いる」と指摘する。 150以上もの離島を訪れ取材してきた「離島経済新聞社」代表の鯨本(いさもと)あつこ氏は、「完全な移住よりも、2拠点・多拠点先として離島を選ぶ人が増えている。東日本大震災やコロナ禍が後押しになった。過去の移住ブームは、主に観光面で、全ての島で起きていたわけではない」と語る。 移住には、“物理的な環境”と“価値観”、2つの壁があるそうだ。「病院が少なく、例えば定期的に透析を受ける人は、大きな病院がある島でないと住めない。虫やカビが苦手な人には向かない。『人間関係が苦手』な価値観にも左右される」。日本の有人島は417島あるが、「2つとして同じ地域はない」。青ヶ島のある東京に絞っても、「11島あるが、歩くと全く違う。島は個性がわかりやすく違っている」。
■本気で移住を考える上で大事な人間関係「間に入るハブみたいな人がすごく重要」
佐々木俊尚氏は、小笠原諸島に一時移住した女性フォトグラファーの話を紹介する。「家を借りようと思ったが、物件も不動産屋もなかった。いろいろ相談して、旅館の仲居として、3カ月住み込みで働いていたら、人間関係ができて『あそこが空いている』と物件を紹介された。濃密な人間関係と、そこに紐付いた経済活動が一体化している」。 鯨本氏は「つながりが濃いと、災害時の共助も強くなる」と、メリットを挙げる。一方で、「島によって雰囲気は違う。移住者にウェルカムな島もあれば、信頼関係の構築に時間がかかるところもある」。その判断基準としては「若者や移住者が『チャレンジしたい』と言った時に、『ダメだ』とつぶされる場所は住みにくい。応援してくれる雰囲気がある島には、定着している人が多い印象だ」と語った。 佐々木俊尚氏は、かつて各地の移住コミュニティーをめぐり、移住先選びのポイントを探った経験がある。「地元の人に聞くと『食べ物がうまいから』と言うが、実際は『移住者がいるから移住する』。最初の1人が魅力的だと、移住者が増えていき、地元住民も無視できなくなる」。 住民と移住者が折り合いをつけるためには、「間に入るハブみたいな人がすごく重要になる」と指摘する。「いまやWi-Fiも使えるし、コワーキングスペースもある。最後は人だ。離島や過疎地では、仕事や住まい探しの役割を行政が担えない。人間関係までワンセットで教えてくれる人がいるか。その情報はメディアに流れず、最終的には口コミでつかむしかない」。 (『ABEMA Prime』より)