『チェンソーマン レゼ篇』映画化は運命? 藤本タツキと“魔性”の声優・上田麗奈の出会い
2022年に放送されたTVアニメ『チェンソーマン』の続編が、劇場アニメとして制作されることが発表された。タイトルは『チェンソーマン レゼ篇』となり、原作でも屈指の人気を誇るエピソード「レゼ篇」を題材としたものになるようだ。 【写真】デンジがレゼに惹かれていくティザーPVカット なぜこのエピソードが“映画”として制作されなければならなかったのか。そこには運命的な理由が存在するように思われる。 『チェンソーマン』は『週刊少年ジャンプ』(集英社)に2018年から2020年まで掲載され、その後『少年ジャンプ+』で第2部が連載されている人気マンガが原作。『チェンソーマン レゼ篇』ではTVアニメ版に引き続き、MAPPAが制作を担当する。 今回題材となる「レゼ篇」は、原作5巻に収録された第40話「恋・花・チェンソー」から、6巻収録の第52話「失恋・花・チェンソー」にかけて描かれたエピソードだ。公安対魔特異4課のデビルハンターとして働くデンジが、とある豪雨の日にレゼというミステリアスな少女と出会うことに。マキマ一筋だったはずのデンジは、その不思議な魅力に抗えず、心を動かされていく……。 デンジとレゼのいびつな青春模様に焦点が当たっており、ほかのキャラクターがあまり絡んでこないのが「レゼ篇」の特徴。また、ストーリーやテーマの面でもある程度ほかのエピソードから独立し、美しい起承転結を描きながら完結しているため、「まるで1本の映画のようだ」といった評価を受けていた。 なお、『チェンソーマン』は『週刊少年ジャンプ』で連載が始まった当初、打ち切りを危ぶまれていた時期もあったが、「レゼ篇」の頃から人気が爆発したと言われている。実際に誌面の掲載順にそうした動きが反映されているほか、アニメ化が決定したのもこの頃だったという。 なぜ同エピソードが映画化されるかといえば、単体で独立した内容となっていることや、純粋な完成度の高さを挙げられる。また近年の『週刊少年ジャンプ』作品では、同じようにTVアニメの放送後、一部のエピソードが映画として展開されるパターンが増加中。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』や『劇場版 呪術廻戦 0』などがその代表格だ。 いずれも物語がほぼ単体で完結しており、ファンからの評価が高いエピソードが原作という共通点をもつ。『チェンソーマン レゼ篇』が、こうしたヒット作に続く可能性は十分あるだろう。 さらに今回の映画化で注目したいのは、原作者・藤本タツキと声優・上田麗奈という2つの才能の組み合わせだ。 藤本タツキは映画マニアとして知られており、初連載の『ファイアパンチ』の頃から作中に映画ネタを盛り込んでいる。それは『チェンソーマン』においても変わらず、多数のオマージュが散りばめられている上、ちょうど「レゼ篇」の前触れにあたる第39話では、デンジとマキマが映画を観に行くエピソードが描かれていた。 「レゼ篇」の内容自体、沖浦啓之監督のアニメ映画『人狼 JIN-ROH』にインスパイアされたものであることを藤本自身が語っており、そのほかにもサメ映画『シャークネード』などのオマージュが見受けられる。そんな映画愛にあふれた作品が劇場で公開されることには、大きな意味があるはずだ。 そして『チェンソーマン レゼ篇』では、ヒロインにあたるレゼ役に上田麗奈が抜擢されていることも注目ポイント。上田は10年ほどのキャリアをもつ実力派声優で、とくに“ミステリアスな映画ヒロイン”を演じる際に強烈な存在感を発揮してきた。 たとえば伊藤計劃原作の『ハーモニー』では、謎に満ちた物語のカギを握る少女・御冷ミァハ役を担当。今年公開された岡田麿里監督・脚本作品の『アリスとテレスのまぼろし工場』では、いくつものウソと秘密を抱えたヒロイン・佐上睦実を圧倒的な熱量で演じてみせた。2021年公開の『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』でも、魔性の女性、ギギ・アンダルシアを演じたことが記憶に新しい。 なおギギ・アンダルシア役はオーディションで勝ち取った役柄だが、その抜擢理由は、まさにミステリアスな演技が認められた結果だった。2020年3月に行われたファンイベントにて、『サンライズ』の小形尚弘プロデューサーは上田の芝居について「可憐な少女っぽいんだけど、ちょっと怖さもあったりとか、ミステリアスな部分っていうのが非常に感じられて、それで上田さんだなって感じにスタッフ一同なりました」と語っていた。(※) 「レゼ篇」も簡単にいえば、純粋な少年がレゼという魔性の美女に翻弄されていく物語なので、まさしく上田が演じることを運命付けられたような設定だ。彼女の本領が発揮されることに期待せざるを得ないだろう。 ほとばしる映画への愛情を作品に注ぎ込んできた藤本タツキと、ミステリアスな少女を十八番とする上田麗奈。この出会いによって、どんな傑作が生みだされるのだろうか。 参照 ※ https://gigazine.net/news/20200324-mobile-suit-gundam-hathaway/
キットゥン希美