選挙運動で配るビラに1枚ずつ証紙を貼る須藤歩さん（右）と岡野晃生さん

　立候補者が選挙区内を奔走し、支援者がポスター貼りやビラ配布に汗を流す選挙。低投票率が続く若者世代が選挙の現場を間近で見れば、政治への関心は高まるだろうか―。静岡新聞社は衆院選（27日投開票）の複数の候補者陣営にボランティアとして県内の大学生6人の受け入れを依頼し、学生に選挙カーでの街宣やビラ配布などを体験してもらった。学生は支援者の団結力や有権者の期待の大きさに驚く一方、「若者の参加の少なさ」を改めて実感し、改善への方策を考えた。 　「△△地区の皆さま、衆議院議員候補〇〇、〇〇でございます。沿道からの応援ありがとうございます」 　静かな郊外を走る選挙カー。そろいのジャンパー、白い手袋姿のスタッフは住民を見つけると満面の笑みで手を振った。同乗した学生も基本的な対応を教わり、時折マイクも握った。 　「なんで名前ばかり連呼するのって思うかもしれないけど、公選法は選挙カーからの演説を禁じていて連呼行為しか認められていないの」とスタッフ。学生たちは学校、病院などの周辺では静穏にする義務や、午前8時～午後8時の時間制限があることも学んだ。 　複数の学生は当初、「今まで選挙カーはうるさいと思っていた」と率直に話していたが、選挙カーに乗ってみて新たな発見を感じていた。市街地だけでなく郊外や中山間地域もくまなく巡り、有権者との対面や握手を繰り返す。人と人の生の触れ合いが意味を持つ。 　静岡大2年の山本エマさん（21）は「子どもから大人まで、非常に多くの人が呼びかけに応えて手を振り返していたのが印象的」と振り返り、常葉大3年の須藤歩さん（21）は「手を振る住民がいると車を止め、候補者が握手しに行くのに驚いた。一人一人の応援が選挙活動の力になっているんだと感じた」という。 　ただ、選挙カーに限らず候補者の訴えは一方通行の場合が多く、内容に物足りなさも感じる学生もいた。ある候補は駅前の街頭演説で、地域の連携で活性化を進めると繰り返し説いた。 　来場者の誘導を手伝いながら訴えを聞いた静岡大2年の岡野晃生さん（20）は「分かりやすい言葉だが抽象的で、実現に向けた具体的な方策は聞けなかった。今いる支持者へのアピールが多く、新たな支持者を獲得したいように見えない」と冷静に分析した。この時は平日午前中で若者が少なかったことは踏まえつつも「教育や子育てなど若い世代向けの政策が少なかった。選挙期間だけでなく政治家が若者と対話する機会を設けてほしい」と語った。 ＜ボランティア参加者＞ 　岡野晃生さん（20）静岡大グローバル共創科学部2年 　三浦舞彩さん（20）同2年 　山本エマさん（21）同2年 　須藤歩さん（21）常葉大社会環境学部3年 　松浦響さん（22）同3年 　青島歓太朗さん（21）静岡英和学院大人間社会学部3年 ※各大学の教員の協力を得て、取材趣旨を説明した上で参加希望者を募集した。各学生の投票に影響を与えないよう、自身の選挙区とは別の選挙区の陣営で1人1日ずつボランティアを行った。