14年落ち中古フェラーリは最高だ! しかし、別れは突然やってきた……(連載:33歳、フェラーリを買う)
29歳で人生初のフェラーリを購入した『GQ JAPAN』の編集部員のイナガキが、ひょんなことからまたフェラーリを購入した! はたして、2回目の“跳ね馬ライフ”はいかに? 【写真を見る】筆者と愛車など(15枚)実用的な荷室がコレだ!
なんでこんなに実用性が高いの?!
春はオープンカーにピッタリな時期だ。先日、桜が舞い散る明治通りを運転した。あれは花見気分に浸れて、楽しかったなぁ。 わがカリフォルニアはフェラーリ初の電動開閉式リトラクタブルハードトップを搭載する。以前にも「スーパーアメリカ」と呼ぶ「575M」ベースのオープンモデルはあったものの、こちらはタルガトップで、かつ限定車。対するカリフォルニアはフルオープンで、量販車だ。つまり、誰もが気軽にフェラーリのオープンカーライフを堪能できるのだ。 この電動開閉式リトラクタブルハードトップは、ベバスト社との共同開発だ。べバスト社ってなんぞや? と、思い、調べると、ドイツに本社を置く自動車部品メーカーだった。メルセデスやBMWのサンルーフ開発などを手掛けてきたという。日本では、ダイハツ「コペン」の「アクティブトップ」を共同開発。電動開閉式リトラクタブルハードトップにおけるノウハウでは、世界トップクラスという。なるほど。たしかにイタリア車というだけでイメージしがちな、壊れそうな動きは一切ない。 フェラーリの公式ウェブサイトには「複数の動作が連続的に展開するのではなく、同時に進行するという点で他と一線を画しており、開閉サイクルにかかる時間が最適化されています。事実、カバーと折り畳まれたルーフの双方が同時に動くため、一連の動作が数秒で完了します」と、記されていた。スムーズさに感心したのは、計算された開閉動作にあったのだ。 しかも、オープンにすればミッドフロントに搭載したV8エンジンがダイレクトに聞こえるのが嬉しい。かつての愛車である「360モデナ」は、キャビンのすぐ背後にエンジンを搭載していたがゆえに、甘美なエンジンサウンドが良く聞こえていたのに対し、カリフォルニアは若干マイルド。遮音性も違えば、クルマの特性も異なるので、致し方ない……と、思っていたが、オープンにすれば見事悩みは解決! さらに豪快なフェラーリサウンドを求めるべくマフラーを換装するぐらいなら、オープンモデルを買えばいいように思う。 もちろん、ボディ剛性はフツーのクーペに比べれば劣るし、重量も嵩む。“走り”を徹底して求めるなら避けたほうがいいだろう。でも、都心部でフェラーリライフを気軽に堪能するなら、カリフォルニアは理想的な一台。ラゲッジルームも十分なサイズだし、電動開閉式リトラクタブルハードトップを格納しても、スーツケースが2個も積める実用性を有する。 実際、荷室は広い。それなりのサイズに達する電動開閉式リトラクタブルハードトップを格納しなければならないので、荷室部はある程度の広さを確保しなければならないからだ。かつて乗っていたボルボ「C70」(2代目)も、カリフォルニアと似たようなシステムを搭載していたため、荷室は広かった。 そういえば先日、鹿児島帰りの友人を羽田空港まで迎えに行ったときもスーツケースや大量のお土産を難なく積めた。一部のワレモノは、リヤシートに置いてからシートベルトでサポート。足りなければリヤシートの足まわりも荷物起きに活用できるから本当に便利。実生活では、月に1~2回しか乗らないのでそこまで使い倒していないものの、本気で“日常の足”にしても、そこまで困る場面はないだろう。ルーフを格納していれば、外から簡単にリヤシートへアクセス可能なので、荷物を“ポンっ”と投げ込めるのも楽チン。 ルーフがあればあったで、それなりに静かで快適な車内空間を楽しめる。もっとも、フェラーリに静粛性を求める人はいないだろう。重要なのは、異音がまったくない点だ。高速走行中でもルーフから“ミシミシ”といった音は聞こえない。金属製ゆえ、布製にありがちな“バタバタ”といった音もしない。 唯一不満なのは走行中に開閉出来ない点だ。現行の「ポルトフィーノ」は、低速域であれば開閉可能なのが羨ましい。もっとも、約20秒で開閉出来るのでさほど困らない。突然の雨が降り出したら困るかもしれないが、そういった曇天時には乗らないので、なおさら困らない。 気軽に、そして便利にフェラーリの魅力を味わえるカリフォルニアであるものの、ひょんなことから手放すこととした。なぜか!? 次回、理由を綴りたい。別れは突然やってくるのだ……。
文と編集・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)