長谷川博己主演『アンチヒーロー』飯田和孝プロデューサー「視聴者の方の予想よりひどいアンチヒーローかも…。正直ビビッてます」
◆ドラマのストーリーの中にはセンシティブな内容もありますが、脚本はどのように作っていったのでしょうか? 脚本家と一緒に打ち合わせをしながら、なるべくフルスイングで作っています。「制作側がちょっと日和ると、“最後はいい人になるんだよね”“結局はヒーローなんだよね”ってなりがちだよね」と話していて、そういうところでストップするのはやめようと。割と行き切ったものを作っています。それを世に出す上で、TBSの審査部や考査部の方々に表現や描写について意見をもらっています。…実際見て、そんなにヤバい感じですかね?(苦笑) メイキングのインタビューとかで、俳優の皆さんが「すごく攻めてるな」っておっしゃっていて…。 でも、今の時代に伝えるべきことを伝えるためには、この世に蔓延っている“毒”というか。その“毒”の部分をしっかり描かないことには、ストーリーがちゃんと伝わらないと思うんです。そこをおろそかにすることで何倍にもなって跳ね返ってきて、キャストや制作陣も傷ついてしまうということは絶対に避けたかったので。その中途半端さというのが命取りになるかなと思って、そこはしっかり描くことにしています。 ◆作品のテーマとして“犯罪者は、罪を償っても更生できないのか・許されないのか”というところがあると思います。これにはどんな意図があって、テーマに選んだのでしょうか? 悪い印象がついたとしても、謝ったら許してもらえる。法律上、釈放されたら許してもらえる…っていうことじゃないのが世の中だと持っていて。例えば会社の上司がパワハラしたとして、その人がどんなに謝っても、反省しても、ずっとそういう目で見られてしまう。だけど子供に善悪を教えるときには、「悪いことをしたら謝りなさい」って言うじゃないですか。 テレビドラマで大衆に向けて発信する上でも、過ちを犯したらちゃんと謝って更生して償うのが最善の策で。“そうしたら見てる人は見ててくれるよ”っていう感じじゃないですか。でも実際に人間って、そんなに簡単じゃなくて。見てる人は見ててくれても、今度はその人が潰される世の中だと思うんですよね。その矛盾に目をつぶっているなと思うところがあって、そういったところに目を背けずしっかりと伝えていきたいなと。 そういう世の中だからこそ、主人公は“殺人犯”というレッテルを貼らせないために動いている。“殺人犯”だと認められてしまったら、今の世の中では絶対に立ち直れないから。そこがこのドラマのメッセージかなと思っています。この強いメッセージを全話かけて伝えたいからこそ、1話の冒頭のシーンはあえて強いせりふから入っています。 ◆このテーマを選んだ具体的なきっかけやヒントになった出来事はありますか? 個人的なことですが、2018年に父が亡くなったんです。実家から車で45分くらいの病院の集中治療室みたいなところに入っていて、1週間ほどで亡くなってしまったのですが。その間、夜は病院に泊まり何事もなければ朝実家に帰り、そこから会社に通う生活をしていました。病院からは「何かあったら電話します」と言われていて。ある朝、実家にいるときに「容体が悪化していてあと数時間かもしれません」って連絡があって、車で向かうじゃないですか。その時にスピード違反で捕まったんですよ。 確か農道の40キロ道路で、「もしかしたら死に際に立ち会えないかもしれない」「これが最後かもしれない」「会いたい」という思いが先立って、スピード超過は絶対にいけないと分かっていつつも、オーバーしてしまって。今いろいろ書いて手続きしている暇なんかない。父の死に目に会えないかもしれないから、僕は振り払ってでも行きたいと思ったんです。でも、それが“世の中のルール”で。そんな僕を外から見たときに、視聴者だとしたらどう思うだろう、と。 それともう一つ。都内の道で左折した、その死角に白バイがいて捕まった車がいたんです。ギリギリ赤信号になったか何かで停められるんですけど、取り締まるんだとしたら、もっと見えるところにいて「見てるぞ」ってやったほうがいいじゃないですか。もし見えるところにいたら、スピードを出している車も減速して、事故の可能性を減らせるし。それって本当に善なんだろうか? とずっとモヤモヤしている中で、コロナ禍になって。それで“マスク警察”みたいなこととか、病気になった人が感染したことで責められるような騒ぎが続いて。 人の行き過ぎた善みたいなものを感じていたときに、もしも善を行おうとしない主人公がいたら…? と思ったんです。一見“悪”に見えるけど、それが何かを変えるきっかけになる悪だったら賞賛されるんじゃないか。それは善になりうるんじゃないかと。僕はこの世で一番悪いことは人を殺すことだと思っていて。その一番悪いことを許す、救う、なかったことにする主人公を描けたら、何かを伝えられるんじゃないかということがきっかけです。 ◆最後に、視聴者の方にメッセージをお願いします。 とにかく、2話まで見てください(笑)。まず1話を見てください、というのもあるんですけど。何かを伝えたい、感じてほしいというよりは、とにかく楽しんでいただきたいです。長谷川博己さん演じるこの主人公を、僕らはいかに視聴者の方にドキドキワクワク、ハラハラしてもらえる主人公にできるかっていうのを全身全霊で取り組んでいるので。そこで何か二次的要素として感じることがあればうれしいなというぐらいで、とにかく長谷川さん演じる主人公を見てほしいです。
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