「孤独死のあった風呂の栓を抜いてはいけない」ーー数々の“ゴミ屋敷”を片付けてきた業者が語る「あまりに過酷な現場」
「ここに住んでいたのは一番上の兄になります。7~8年くらいは住んでいたと思います。ちょっと病気がちで透析をしたりしていたので、ご覧の通り、身の回りのことって自分の周りしかできていないと思うんですけど」 唯一の生活スペースだった二段ベッドの下段にも細々としたモノが散乱している。しかし、ベッドの周りを見てみるとマメな一面も垣間見える。いろんな場所に生活に必要なモノがぶら下がっていて、座ったままでもすぐに手で取れるようになっているのだ。病気で思うように動けなかった様子が浮かんでくる。
収納棚に目をやると、あらゆるモノに説明書きをしたシールが貼られていることに気付く。「冬物ジャケット」と書かれたシールが貼られた衣装ケースは中身が季節ごとに分けられている。調味料には「しお」「さとう」「かたくり」と書かれ、タッパーにはそのサイズまで記入してある。電気のスイッチにはそれぞれ押すとどこの電気が付くのか記されていた。 「過去に8年ほど私の家に住んでいたこともありましたが、同じような状態でした。そのときは体も悪くなかったので自分で片付けていたんですが、やっぱりモノが多くて私も大変な思いをしていました。ベッドもすごかったでしょう。それがいつも一番困るんですけど好きみたいですね。穴開けたりしたらダメって言うんですけど」(妹)
妹の言う通り、ベッドの周りはさながらコックピットのようだ。モノの配置に対する強いこだわりがなければ、そもそもここまで大量のモノをパズルのようにこの狭い部屋に詰め込むこともできなかっただろう。 妹は「いつかはこういう日が来るんじゃないかと思っていた」と話した。しかし、距離的にも年齢的にも自分たちだけで片付けるには大きな労力と時間がかかってしまう。すぐにイーブイへ依頼することを決めた。 ■いつまでも鼻の粘膜に残る孤独死の臭い
イーブイにとって孤独死の現場は珍しいものではない。代表の二見氏に片付ける手順を聞いた。 「この現場にはウジ虫が湧いていたので、作業の前の見積もりの時点でドアの隙間を養生テープで埋めました。そうしないとウジ虫が外に出てきちゃうんです。大阪に多い文化住宅(2階建ての木造アパート)なんかだと、わずかな間をすり抜けてウジ虫が隣の部屋にも出てくるんですよ。それが通報のきっかけにもなったりするんです」(二見氏、以下同)