大分県をレモン産地に 香料メーカーなど参入 原料の安定調達へ
大分県佐伯市でJAグループや行政と連携し、香料大手や食品加工業者が原料レモンの生産に乗り出している。輸入シェアの高い香料などの加工用原料を安定調達する目的に加え、青果での出荷にも可能性を見いだす。産地化を目指す同市で、地域農業のけん引役としての期待がかかる。 小川香料(東京都中央区)が設立した農場では、10月、グリーンレモンの初出荷を迎えた。一部は青果として市場に出荷。残りの大部分は黄色に色づく12月を待ち、香料原料など加工向けに収穫した。24年度は計15トンだが、30年度には180トンの収穫を見込む。 原料栽培で農業参入を検討していた同社が17年、商談会でJA全農おおいたのブースを訪れたのを機に協議がスタート。同市は無霜地帯で基盤整備も進み、県も企業参入に積極的なことから18年に農業生産法人を設立し、8・6ヘクタールに21年から苗を植え始めた。 同社は食品向けや香水、化粧品用など、多様な香りを手がける。天然の香りと合成成分を混ぜて実需者の求める香りを作るため、天然原料の安定確保は不可欠だ。 農場の上野俊輔代表は「原料の国産志向が強まっている。自社の求める品質を追求できるのは大きな魅力」と参入のメリットを話す。合わせて「地域全体で広がって初めて成り立つ」とレモンのブランド産地化に意欲を示す。 レモンは青果でも引き合いが強い。全農おおいたの担当者は「瀬戸内よりも1カ月早く出せる産地として市場の反応がいい。まずは基盤を作り、全国での知名度を高めたい」と意気込む。 23年には同社と全農おおいたが事業連携協定を締結し、カボスやイチゴなども含め、県産農産物を使った香りの商品や観光施策を通じて地域の活性化に取り組む。県とも同様の「香りの連携協定」を結ぶ。 同市ではドライフルーツを手がける南信州菓子工房(長野県阿智村)も農業法人を設立してレモン生産に参入。2法人合わせて計22ヘクタールとなった。 全農おおいた営農開発部は「農家が助け合うように、企業同士も協力して、産地全体で発展していければ」と、法人に産地振興のけん引役を期待する。 (柴田真希都)
日本農業新聞