甲子園準V2回経験、佐々木監督 学法石川で「福島の勢力図変える」 秋の東北大会
宮城県で14日、開幕する第73回秋季東北地区高校野球大会に、学法石川(福島)が3年ぶりに出場する。チームを率いるのは、仙台育英(宮城)を甲子園で2度の準優勝に導いた佐々木順一朗監督(60)だ。学法石川は甲子園に春3回、夏9回出場しているが、1999年夏を最後に遠ざかる。2021年春の第93回選抜大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)の出場校を選考する際の参考資料となる東北大会を前に、佐々木監督に意気込みを聞いた。【上鵜瀬浄】 ――福島県大会は3位だった。 ◆勝った3試合はすべて逆転と、くじけないチームになった。初戦の日大東北との2回戦は0―3とリードを許した三回終了後に雨で約40分間の中断があり、四回に4点を挙げた。続く準々決勝も0―2で迎えた三回に6得点。準決勝は福島商に敗れたが、2―8から終盤に1点差まで追い上げた。3位決定戦は一回に3点を先行され、中盤に試合をひっくり返した。強いチームが勝つとは限らない。野球は楽しいです。 ――長年の指導者生活で変わったか。 ◆意味なく怒らなくなりました。雰囲気が緩いから主将を呼びつけて怒鳴るとか、三振にこだわる投手を怒るとか、返事が小さいとか、選手を萎縮させるだけでナンセンス。仙台育英で01年春のセンバツで準優勝した後に監督を退き、大学院で心理学を学んだ。自分がされて嫌なことは人にしないようになった。ただし、SNS(ネット交流サービス)の取り扱いやマスクの着用といった社会的な常識については厳しく指導しています。 ――理想の監督は。 ◆グラウンドに「いい親父(おやじ)になれ」「ディズニーランド構想」という横断幕を掲げています。おやじとは、どんな危機でも微動だにしない。本塁打を放った。チームが勝った。こういう時の笑顔は簡単だが、味方がミスした時に笑顔でいるのは難しい。起きてしまったことは仕方がないと思い、次の局面に切り替えられるか。ディズニーランドのスタッフは、ゴミを目の前で放置されても、笑顔で片付ける、全員がキャスト(配役)です。ゲストに楽しい思い出を贈ることができればリピーターになる。チームも同じ。難局にも動揺せずに次善の策を立て、成功体験を積み重ねて、選手全員で楽しみ強くなる。監督はその手伝いをする。寮で部員と一緒に食事することもあります。 ――聖光学院が19年まで夏の福島大会を13連覇し、20年夏の独自大会も制した。 ◆秋に限れば、19年は聖光学院にコールド勝ちしました。20年は聖光学院を2回戦で破った東日本国際大昌平が初優勝。私も学法石川に招かれた以上、良い結果をもたらして、「学石、よみがえったな」と地元・石川町で支える人たちに思ってもらい、生徒も集まってほしい。仙台育英を全国区にしたように、学法石川で福島の勢力図を変えたいです。 ――秋の東北大会に出場する県3位チームには思い出がある。 ◆15年の青森山田、17年の日大山形は、ともに私が指揮した仙台育英を破って、翌年春の選抜に出場した。学法石川の選手も何かしてくれる雰囲気がある。期待しています。 ◇ささき・じゅんいちろう 59年生まれ。宮城県出身。76年夏と77年春の甲子園に東北の投手として出場した。早稲田大から電電東北に入社。仙台育英コーチを経て95年に監督就任。春6回、夏13回の計19回甲子園に出場し通算29勝を挙げ、01年春と15年夏に準優勝。18年11月から現職。社会科教諭。