『ラフプレー』に警鐘を鳴らす千葉ジェッツのジョン・パトリックHC、誤解を与えかねない発言の真相
意図していなくても、間違いなく対立を生んでしまった状況
世界標準のリーグとなることを掲げるBリーグにおいて、欧州で確固たる地位を築いたパトリックヘッドコーチの意見には耳を傾けるべきだろう。また、ラフプレーが減り、リーグ全体の故障者が減って、より質の高い試合を提供できることに対して、反対の声を挙げる人もいないだろう。 だが、パトリックヘッドコーチの提言には賛同するが、一方でコメントの内容には同意できない部分もある。まず、ラグビーがラフプレーを許される競技と受け止められても仕方のない言い方をしている点だ。パトリックヘッドコーチは日本語が母国語でない中でも、日本語で会見に対応している。そのため、意図しないニュアンスで相手に伝わってしまうこともあり得るだろう。ただ、一度ではなく、複数回にわたってラフプレーとラグビーを同列に扱っていると聞き取れる発言をしたのは事実だ。Bリーグ屈指のビッグクラブの指揮官が意図する、しないにかかわらず、他競技に対するネガティブ発言をしてしまったことは率直に残念な思いだ。 また、本人はラフプレーはリーグ全体の問題であり、自分たちがラフプレーをした時は、しっかりとペナルティーを与えてほしいと強調している。とはいえ、琉球、宇都宮、アルバルク東京に対して、名指しで批判していることも事実だ。この3チームはともに千葉Jより成績上位のチームであり、揃ってサイズとフィジカルを大きな武器としている。偏った見方をすれば、コンタクトに対する笛がこれまでより厳しくなれば、5アウトからのスピードが持ち味の千葉Jにとっては有利になる。こちらも本人にその意図はなくても、この時期の宇都宮、琉球戦後の積極的な発言によって、ポストシーズンに向けた審判へのアピールも含めた戦略的コメントと思われてしまっても無理はない。また、何よりも「バスケではなく、ラグビーをしている」と会見で言われたチームの選手、スタッフがどういう感情を抱くのか。挑発されていると受け取るのが自然だろう。 ヴィラン(悪役)はエンターテインメントにスパイスをもたらす。パトリックヘッドコーチにそれでも構わないという強い信念があるのなら、この姿勢を貫いてもらいたい。ただ、そうでないのなら、Bリーグをより質の高いバスケットボールにしていくためにという真摯な思い以外の部分がクロースアップされやすい今の状況は非常に不幸であり、このままシコリを残したままシーズンクライマックスを迎えるのは残念だ。
鈴木栄一