【温泉むすめ】連携して誘客目指そう(11月14日)
福島市の飯坂温泉はアニメ風のキャラクター「温泉むすめ」を使った誘客事業を展開し、入り込み数を大きく伸ばしている。若者の志向を地域再生に生かすモデル的な取り組みとして注目される。情報発信にキャラクターを採用している県内の他の温泉地とも連携を深め、観光周遊の輪を広げてほしい。 飯坂温泉は、全国に誇る「奥州三名湯」の一つとして最盛期の1973(昭和48)年の入り込み数は177万人に達した。その後は減少傾向をたどり、2005(平成17)年には100万人を切った。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に新型コロナ禍が追い打ちをかけ、2021(令和3)年は39万人に落ち込んだが、昨年は68万人に回復した。関係者は2019年からの温泉むすめ「飯坂真尋[まひろ]」を活用した各種事業が奏功したとみている。 飯坂温泉では旅館、飲食店、新聞販売店など地域の事業者が一体となり、飯坂真尋の声優が登場するライブやトークショーなどを繰り広げている。先月27日のイベントには全国各地から約700人が訪れ、ファンの多くが宿泊した。限定販売のオリジナルグッズも人気を集め、これまでの経済効果は総額数億円に上るとの試算もある。県外の若者がキャラクターの魅力に引かれて、県内の大学に進学した例もあるなど、さまざまな波及効果が表れ始めている。
郡山市出身のコンテンツプロデューサー橋本竜さんが海外でも人気の日本のアニメを活用し、地域活性化に役立てたいと企画した。温泉地ごとに特徴を生かしたキャラクターを考案した。その数は8年間で127に増えている。飯坂温泉では、アニメなどサブカルチャーへの理解が深い旅館関係者が、飯坂真尋による温泉街のPRに熱心に取り組んできた。 映画やアニメの舞台を巡る「聖地巡礼」がブームとなり、インバウンド(訪日客)も全国各地に足を延ばしている。県内では、いわき市のいわき湯本温泉、郡山市の磐梯熱海温泉、会津若松市の東山温泉、喜多方市の日中温泉に温泉むすめがいる。関係団体が周遊ルートを設け、国内外から誘客を図ってはどうか。温泉地のみならず、本県の食や文化、復興を伝える貴重な機会となる。(渡部純)