【卓球】異質なる者、異彩を放つ。Tリーグで世界11位を撃破した出澤杏佳は「常識ある変人」
卓球ならではの「用具選手」がフィジカルを鍛え、変化+激しさを身にまとった。そして世界ランキング11位のディアスに完勝
「全日本学生選手権」と「全日本学生選抜」を制したチャンピオン。 表ソフトと粒高ラバーを駆使する異端の選手、出澤杏佳(専修大)は、もはや「用具選手」ではなく、フィジカルを鍛え、鎧(よろい)をまとった攻撃選手となっている。他人と違うことを自覚し、強みに変えた学生女王の勢いが止まらない。 12月25日のTリーグでは九州アスティーダのエースとして世界ランキング11位のディアス(プエルトリコ)に完勝し、チームを勝利に導いた。 「ディアス選手は世界のトップで活躍している選手なので、自分は声を出して気持ちでは負けないように向かっていきました。すぐに守りに入らないで自分から積極的に攻撃できたのが勝因だと思います。応援してくださる人たちに、楽しんでもらえるようなプレーを見せられるように頑張ります」と試合後に語った出澤。 それは出澤自身への「自信」という大きなクリスマスプレゼントになったはずだ。 現在の卓球界では、男子では9割ほどが両面に回転のかかる裏ソフトというラバーを貼ってプレーする。女子ではその比率が7割ほどになり、変化とスピードを重視するので裏ソフトと表ソフト(粒が表面にある)という異質ラバーを組み合わせる選手が多い。 その中でも出澤のようにフォアにスピード系の表ソフトを貼り、バックには本来守備的なラバー、粒高ラバーを貼る、この組み合わせの選手は稀である。 発売中の卓球王国2月号のインタビューでは出澤はこう語っている。 「『変だね』と言われるのは普通の人は嫌じゃないですか? 高校生の頃は私も嫌だったけど、大学で寮生活をしているうちに『私はほんとに変人だわ、変なのが普通なんだから、変と言われたほうが自分らしい』と思えるんです」 フォア・表ソフトとバック・粒高ラバーの使い手。しかし、用具の特異性だけでは世界のトップランカーを撃破することはできない。 学生女王は確実に力をつけ、1月の全日本選手権に照準を合わせている。5回戦で彼女はパリ五輪代表がかかる伊藤美誠(スターツ)を対戦する。見逃せない試合になるだろう。
卓球王国 今野昇