土砂災害の4割弱、632件が警戒区域外に 2年分の国データを分析
2021~22年に全国で起きた土砂災害約1700件超のうち、4割弱が「土砂災害警戒区域」を外れた場所にまで土砂が達していたことが、朝日新聞の分析でわかった。相次ぐ記録的な大雨の影響のほか、警戒区域の設定自体に課題がある実態が浮かび上がった。 【画像】土砂災害警戒区域には「盲点」が 警戒区域は土砂災害のリスクを住民らに知らせ、避難を検討する際の重要な情報だ。土砂災害防止法に基づいて、都道府県が住民に危険がおよぶ地域を指定する。昨年末時点で全国69万226カ所に上る。 土砂災害時に迅速に対応するため、国土交通省は21年から、土砂が達した地点の座標情報を集約している。朝日新聞はこの1767件のデータを情報公開請求で入手。分析のために抽出できた1752件のうち、座標の明らかな誤記や実際の住所と一致しない21件を除いた計1731件を元に、全国の警戒区域と照らし合わせて発生状況を分析した。 その結果、土砂が警戒区域内にとどまったのは計1099件だった。残る632件(36・5%)は、想定を超えて警戒区域の外に及んでいた。 国交省の担当者は「近年の気候変動による大雨の影響で、災害の規模が想定を大きく超えてしまっている」と話す。 ただ、警戒区域の外に土砂が及んだケースを詳しく調べると、警戒区域の設定の際に考慮されない建物や橋などの構造物に土砂がぶつかり、想定外の範囲に被害が及んだケースが複数確認できた。 国交省などによると、急増している記録的大雨などの影響で、土砂災害は増加傾向にある。03~12年の10年間では平均1180件だったが、13~22年には同1446件に増加。昨年はこれを上回る1471件が起き、8人が死亡した。能登半島地震の被災地域でも400件以上の土砂災害が確認されている。(山本孝興)
朝日新聞社