脱毛サロン大手「銀座カラー」、被害者10万人を抱えて突然の破産
前金ビジネスの頓挫
エム社の成長を支えてきたのは顧客からの前金方式によるサービス料だった。 前金方式では、顧客が右肩上がりに増え続ける間は、集めた前金を人件費や出店費用などの設備投資に充てることができる。だが、ひとたび顧客が減少に転じると、一気に資金繰りに狂いが生じる。 東京商工リサーチの調査では、資産の乏しいエム社は従来から銀行借入は少なく、2021年4月期末ではゼロだ。これは一方で、前金に依存した資金繰りを続けていたことを意味するとみられる。 コロナ禍での顧客減少という想定外の事態に陥ったとはいえ、身の丈に見合う経営だったのか。急成長が目くらましになっていなかったのか、客観的な検証が必要だろう。
繰り返される前金ビジネスの破たん劇
過度に前金に依存した資金繰りが破たんし、顧客を巻き込み社会問題化したケースはこれまでも後を絶たない。 2023年は特に同様のケースが目立つ。エム社と同じ大手脱毛サロンとして知られた「C3」の運営会社である(株)ビューティースリー(TSR企業コード:297178202、江東区)や、男性専門脱毛サロン「ウルフクリニック」の経営に携わっていた(株)TBI(TSR企業コード:138345503、東京都港区)、「東京プラス歯科矯正歯科」のクリニック名でマウスピース矯正を手掛けていた(医)社団友伸會(TSR企業コード:294157441、豊島区)など、美容関連の「前金ビジネス」の破たんが相次いでいる。 ◇ ◇ ◇ 最近の美容関連の経営破たんは、コロナ禍という特殊要因が少なからず関係している。だが、サービスの利用者確保には自ずと限度があり、コロナ禍でなくてもいずれは拡大策に限界が訪れるのは自明の理だったはずだ。 前金ビジネスは美容関連だけにとどまらないが、美容業界では特に、若者を中心に多数の被害者を生む悲劇は幾度となく繰り返されてきた。それでもなくならないのは、あくなき美への追求という永遠の憧れがある。 消費者心理に便乗した前金ビジネスには危うさがあることは否めず、消費者保護の観点からは、慎重な事業計画の監視も求められる。 (東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2023年12月19日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)