私たち、理想のカップルだったはずなのに…44歳女性、10年間連れ添った〈2歳年下パートナー〉の急死で直面した「想定外の出来事」に頭を抱えたワケ【相続の専門家が解説】
遺言書が必要だと知らなかった
さらに困ったのは、住んでいるマンションのこと。お金を出し合って半分ずつの権利があるのですが、パートナーの権利は藤井さんにはもらえないとわかって困ってしまったのです。 自分が住んでいるのに、半分はパートナーの父親名義になるとは想定外の事態でした。 病気が発覚してから数ヵ月で亡くなったので、入院、検査、手術と落ち着かず、今さら病室で結婚届の話もできず、自分のためにしてもらわないといけないことは言いだせなかったのですが、こんなに大変だという発想もありませんでした。 パートナーの父親は、2人で購入したことは承知のことなので、幸い、手続きには協力すると言ってくれています。それでも、どういう手続きをすればいいのか、コラムから相談できることを知り、教えてもらいたいと来られたのでした。
贈与?遺贈?売買?
パートナーの父親が協力してくれるといっても、いきなりは相続人でない藤井さんの名義にすることはできません。パートナーから相続人ではない藤井さん名義にするには、遺言書で、「遺贈する」として書いておいてもらうことが必要でした。 今からできることは、まず父親が相続して名義変更をし、それから藤井さんに遺贈、贈与、売買のいずれかの方法で権利を譲るとなります。 たとえば2分の1は父親名義のまま住み続け、ご主人の父親に公正証書遺言を作成してもらって遺贈を受けることも方法の一つで負担も少ないことです。
結局は買い取った
ところが、亡くなったパートナーには妹さんがいるということ。遺贈を受ける場合に、将来、父親の相続で妹さんとトラブルにならないとも限らないため、不安は残したくないとのこと。また、贈与や遺贈など無償でもらうことには抵抗があったようで、結局は父親の権利を藤井さんが買い取ることになりました。 幸い、購入価格より値下がりしている時期でしたが、財産評価からすると2分の1は1,000万円以上になりましたが、これで遠慮なく自分のものだと言えるのですっきりするということでした。 売買契約書を作成して、相続登記と売買の所有権移転登記を一度にすることで全部を藤井さんの名義にすることができました。