記者だけが知る「日本ゴルフ協会の不手際が露見した経緯」「選手が被った不利益」「これからJGAに求めること」
「23年の関東学生は、なぜか加算されていないんです」
日本ゴルフ協会(JGA)から「世界アマチュアゴルフランキング登録競技 成績提出漏れに関するご報告」と題したリリースが配信されたのは、昨日(4月23日)の午後4時だった。 【写真】バレたら“永久追放”!? これがマスターズで“持ち込み厳禁”の品目です それから20分ほどが経過すると、日本の各種メディアから「JGAが謝罪と再発防止策発表」「7大会の競技情報が提出漏れ」「国内開催7大会の成績が世界アマランキングに反映されない不手際」といった記事が次々に発信された。 その様子を見て、「やっと、ここまで来てくれた」と、とりあえず私は胸を撫で下ろし、ほぼ1カ月ぶりに安堵した。 というのも、今回のJGAのミスを発見する形になったのは、実を言えば、私だった。そして、「会見を開くなどしてJGAの不手際をきちんと世に伝え、再発防止につなげる姿勢を示すべきではないですか?」とJGAに訴えかけたのも私だった。 そこから先のJGAの対応は、誠実なものだった。謝罪と再発防止策を記したリリースを配信することも、事前にお知らせいただき、その通り、リリースが配信され、日本国内に向けて報じられた。 「これで一件落着だ」と、一度は安堵した。だが、まだ肝心なことを伝えきれていないのではないかと思い始めた。 伝えきれていない肝心なこと――それは、今回のJGAの不手際によって、「どんな人々が、どれほど翻弄され、どんなに心をすり減らしていたか」ということである。 そこを伝えなくてはいけない。そう思った途端、私はPCを開き、キーボードを叩き始めた。
私がJGAのミスを発見した経緯は、ある意味、偶発的なものだった。 昨年の日本アマ覇者の中野麟太朗(早稲田大学3年)が今夏の全米アマ出場を目指していることを知り、父・恵太氏とやり取りをしていた3月下旬のことだった。 恵太氏は「5月22日時点で世界アマチュアゴルフランキング(WAGR)100位以内に付けていれば、全米アマの本戦から出場する資格が得られる」と説明してくれた上で、日本のアマチュアにとって世界アマランクをアップさせることが、いかに至難の業であるかも説明してくれた。 その際、「2022年の関東学生(選手権)のポイントは加算されたのに、23年の関東学生は、なぜか加算されていないんです。学連(関東学生ゴルフ連盟)が成績を提出することをやめてしまったんですかね?」と、落胆気味に話してくれた。 23年の日本アマ優勝、日本学生2位だった中野選手は、23年関東学生では4位タイだった。 その4位タイに応じたポイントがカウントされていたら、世界アマランクはどう動いたのか、なぜカウントされていないのかを「私も調べましたし、麟太朗も大学の先輩にお願いしたりして、さんざん調べましたが、結局分からないんです」。 それを聞いた私は、その部分の真相を調べてみようと思い、独自で調査取材を開始した。 世界アマランクを統括しているのは米国ゴルフの総本山USGAと欧州ゴルフの総本山R&Aである。学連からUSGAやR&Aへダイレクトに成績を提出するとは考えにくかったため、まずは日本ゴルフの総本山であるJGAに事情を聞いてみようと電話をかけた。 得られた答えは「学連から送られてきた大会の成績は、すべてJGAから世界アマランク事務局(USGA、R&A)へ送っている」という内容だった。 しかし、世界アマランク上の日本人学生の欄をくまなく眺めてみると、中野選手の父親が言っていた通り、「2022年関東学生」はカウントされているものの、どの選手の欄にも「2023年関東学生」の記載はない。 もしかしたら世界アマランクの事務局側が日本の学連主催大会をカウントの対象から外してしまったのではないかという疑問を覚えた私は、USGAとR&Aに問い合わせた。 「関東学生、関西学生は、どちらも対象大会です」という返答がR&Aから飛ぶように返ってきた。 「でも、2023年関東学生はどこにも記載されていない。それはなぜですか?」と、さらに尋ね返した。 すると、R&Aからは「2023年関東学生の成績は受け取っていない」という答えが返ってきて、仰天させられた。