【元局アナ・阿部知代さん(61歳)】が「今なら語れる…フジテレビ時代の恋愛事情」|美ST
40代のころの私
思いもよらなかったバラエティ番組を担当し、40代はまさに人生の転機でした。若いころに想像していた40代って、もっと大人だったはずなのに、自分は未熟で。でも年齢は重なってゆくわけで、もっとしっかりしないとこの先辛いかもと思い始めたころでした。
定年から逆算して57歳でマンションを購入
昨年7月、38年間勤務したフジテレビを退職しました。契約形態は変わりましたが、今も同じ報道局で同じ仕事をしています。素敵な先輩後輩に囲まれていた自由なフジテレビが大好きで、辞めようと思ったことは一度もありません。60歳を過ぎて、フジテレビを辞めたら自分がどうなるか、ずっと想像がつかなかったんです。毎月お給料が振り込まれ、保険証もある中で生きてきて、それが全部なくなるってどういうことなのか。50代後半に差し掛かって現実味を帯びてきて、考えざるをえなくなりました。 例えば住む場所にしても、実家の群馬に帰り、ひとり暮らしの父と住むべきか、東京と群馬の2拠点生活にするのか悩みました。結局、群馬には頻繁に帰って父との時間を持ち、今まで通り東京に住む道を選びました。ずっと賃貸マンションでしたが、独身で定年になると途端に家を借りるのが厳しくなると聞き、買うしかないと決意。グレイヘアも然りですが、定年に向けて逆算し、57歳で家を探し始めました。不動産屋さんに資産を聞かれたとき、税理士さんに丸投げしていたので、まさに「はて?」。貯金や投資をしていたわけでもなかったし、無理なくローンが組める価格帯で、気に入っているエリアで見つけました。小さな部屋ですが、リノベーションをして快適に暮らしています。 会社を辞めたら寂しくなるだろうと思っていたけれど、同じ仕事をしているので寂しくないし、逆に正社員でなくなるとフジテレビというジャケットからTシャツに着替えた身軽さを感じて新しいことに挑戦できるように。 まったくダンス経験はないのですが、身体性に富んだ作品を創作するカンパニーデラシネラのエキストラのオーディションを受けて合格。舞台に立ちました。この年になって未経験な分野に挑戦するって勇気はいるけど楽しいですね。長年続けている俳句をまとめた句集も自費出版で計画中です。 週末は浄瑠璃や俳句、観劇などで充実。歌舞伎から落語まで年間150本は観ていますね。 仕事面では、還暦を機に取材が殺到。まさに還暦特需(笑)。こんなに調子がいいと、そろそろ穴があるんじゃないかしらね。人生は何が起こるかわからない。順調に歩いているようで結構いろんなところに穴が開いています。たまたま落ちずに歩けたら、それは奇跡。恋に落ちるように人生は穴だらけです。落ちる前に心配してもしょうがない。何とかなりますって。 フジテレビで一番大好きなドラマ「古畑任三郎」が今年で30年。私は30歳でした。毎回、キメ台詞「古畑任三郎でした」を一緒に口ずさみ、社員としてとても誇らしかった。今もフジテレビで働いていられることを心から幸せだと思っています。
阿部さんが40代に伝えたいこと
誰かの真似をするよりも、自分らしくいるのが一番ラクで幸せです。自分は何をしているときが幸せなのかをよく見極め、その幸せを集めて周囲に敷き詰めて生きる。人生は一度きり、楽しんで幸せを感じながら生きましょう。 《衣装クレジット》 ワンピース(TADASHI SHOJI) 2024年『美ST』9月号掲載 撮影/吉澤健太 スタイリスト/にしぐち瑞穂 取材・文/安田真里 再構成/Bravoworks,Inc.