センバツ2023 2回戦 彦根総合、夏こそは 初勝利届かず、健闘に大きな拍手 /滋賀
阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開かれている第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)第5日の22日、初出場の彦根総合は光(山口)との初戦に臨んだ。互いに譲らない緊迫した接戦となったが、終盤に失点し0―2で惜敗した。春夏通じて初めての甲子園で勝利を挙げることはできなかったが、最後まで粘り強く戦った選手たちにスタンドからは「よくやった」と大きな拍手が送られた。【飯塚りりん、猪森万里夏、安徳祐】 待ちに待った初戦。三塁側アルプススタンドはスクールカラーの緑色のジャンパーに身を包んだ生徒や保護者、OBら約2000人の応援団で埋め尽くされた。団長の野球部員、吉田悠人(3年)は「元気の良さで緊張をはね飛ばし、粘り強いプレーを見せてほしい」と期待する。 試合は七回まではスコアボードにゼロが並ぶ。先発の勝田新一朗(同)は朝、球場に到着して先発を告げられた。「自分が打たれたら誰でも打たれるはず。自分が一番だ」と気持ちを引き締め、マウンドに立った。序盤から走者を背負うが、要所を抑える冷静な投球に父茂秋さん(54)は「ピンチの場面でもいつも通りに投げている」と笑顔だ。 二回1死一、三塁の場面では、打者の三振の間に一塁走者が盗塁して更に進塁しようとしたところを挟殺プレーでアウトにし、勝田をもり立てる。捕手の森田櫂(3年)は「相手も緊張しているので飛び出すことを予想していた。練習してきたことを出せた」と話した。 勝田を援護したい打線は五回に友利瑞煕(2年)が二塁打を放ち、初めて得点圏に走者を進める。母美鈴さん(47)は「思わず叫んでしまった。この調子で打線もつながってほしい」と祈る。六回にも田代奏仁(3年)が内野安打と失策で二塁に進み、父の和仁さん(45)は「毎日素振りを続けているのを見てきたので安心した」と胸をなで下ろした。しかし後続が続かず、OBの道下和樹さん(29)は「あと一本が出ない。攻めてはいるが苦しい展開だ」と天を仰ぐ。 七回途中からエースの野下陽祐(3年)に継投したが、八回に試合が動く。2死一、二塁で適時打を許して先制され、九回は守備の乱れで追加点を許す。主将の上田大地(同)は選手を集め「裏の攻撃があるから、しのごう」と声を掛け、それ以上の得点は許さない。 最後の攻撃をスタンドも大声援で後押しするが届かず。悔しい結果となったが、応援団は選手の健闘をたたえ、スタンドの野球部員からは「明日から頑張ろう」と声が上がった。昨秋は四番としてチームを支えた蟹江星允(3年)は「チャンスはあったので残念だが、夏は絶対に戻ってくる」と前を向いた。 ◇膳所高も後押し ○…彦根総合の応援席には県立膳所高の応援団も駆けつけ、31人が野球部員や吹奏楽団に合わせてチアリーディングを披露し、応援に彩りを添えた。膳所高は5年前のセンバツに出場したが、現役部員にとっては初の甲子園。キャプテンの伊藤知里さんは「同じ滋賀県民として選手たちの力になりたい」と話した。ともに応援した彦根総合野球部の脇本悠月さんは「声も大きくなり、テンションが上がった。選手も頑張れたと思う」と喜んだ。 ◇緑の楽曲を披露 ○…彦根総合のアルプススタンドでは、同校の吹奏楽部員ら25人の楽団が演奏で応援を盛り上げた。そのうち現役部員は8人。選手らを大きな音で勢いづけようと卒業生らも駆けつけ、スクールカラーの緑にちなんだ11曲を披露した。仕事の合間を縫って参加したOGの高橋和奏さん(24)は「ずっと夢だった甲子園に出る後輩にエールを届けたい」。並川叶愛部長は「選手の力になれるよう一体になって応援を届けたい」と力を込めた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇チーム鼓舞し投手戦演出 森田櫂捕手(3年) 「自信を持って投げてこい」。誰よりも叱られ、誰よりも仲間を叱咤(しった)激励してきた捕手は甲子園でも大きな声を張り上げた。 同じく捕手だった宮崎裕也監督に「捕手はグラウンド全体が見えるチームの要だ」と言われ厳しい指導を受けてきた。投手に安心して投げてもらおうとワンバウンドの球を止める練習を重ね、キャッチング力を磨いた。 グラウンドでは選手の動きが鈍ければ厳しく注意するが、いいプレーには大声でほめてチームの士気を上げる。投手陣の一人、武元駿希(3年)も「櫂のサインには首を横に振らないと決めている」と全幅の信頼を置く。 この日は、先発の勝田新一朗(同)が持ち味とする直球で内角を攻めて再三のピンチを切り抜けたが、守りのミスで失点し「守備の動きが硬かった」と悔しさをにじませた。「敗戦を引きずる選手もいると思うが、『夏まで時間はないぞ』と声を掛けたい」と次を見据えて夢舞台を後にした。【飯塚りりん】