『パシリム』のデル・トロ監督、生成AIアートを「スクリーンセーバー」と一蹴
生成AI(人工知能)が生み出したアートは「真の芸術」足り得るのか──この命題をめぐる議論が沸騰している。映画『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー賞を受賞したギレルモ・デル・トロ監督は、否の立場だ。生成AIには「そこそこ魅力的なスクリーンセーバー」以上のものは創れないと考えている。 この技術には将来性がないとして否定しているクリエイターは、デル・トロだけではない。 ■デル・トロは生成AIについて何を語ったのか 映画『パシフィック・リム』や『パンズ・ラビリンス』、『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』で知られるデル・トロは、英国映画協会(BFI)がロンドンで主催したトークショーの中で、生成AI技術の影響について公然と批判。「AIは、そこそこ魅力的なスクリーンセーバーを作成できることを実証した。本質的にはそれだけだ」と語った。 「芸術の価値とは、制作にかけた費用の高さや手間の少なさで決まるものではない。その作品に触れるために、どれだけの覚悟が求められるかによる。あのようなスクリーンセーバーに人々はいくら金を出すだろうか。それを見たところで、息子や母親を亡くした経験や無為に過ごした青春時代を思い出して泣くだろうか。ありえない」 デル・トロのこの動画はソーシャルメディアで拡散され、クリエイター仲間やAIに批判的な人々から称賛を集めた。 デル・トロがAIを批判するのは今回が初めてではない。2023年には、AIを制作支援に使用したアニメを「生命そのものへの侮辱」と呼んだ。これは、宮崎駿監督がAI技術を使って作成したCG映像のデモを見て嫌悪感を抱き、「生命に対する侮辱」と発言したことと通じる。 また、デル・トロは2022年にも、エンタメ情報サイトDeciderのインタビューで「機械が描いたイラストや情報の外挿には興味がない」と語っている。「すばらしいアーティストであるデイブ・マッキーンと話をしたが、AIが絵を描けなくなることを何よりも望んでいると言っていた」とも述べた。 デル・トロ以外にも、AI技術に反対の声を上げているアーティストやクリエイターは少なくない。その多くは、生成AIが無数の作品を制作者に無断で「訓練」に利用し、人間の労働の価値を損なって、クリエイティブ産業で働く人々の雇用を脅かしていると批判している。