奇妙な人形「へんな人」を作るのは“普通の人”か 深夜0時の創作活動は“淡々とした情熱”【超老芸術】
ネコのような目をして歯をくいしばった人形たち。その名も「へんな人」は、どんどんその数を増やしています。午前0時に起床して創作活動。それでいて日中は福祉施設の役員として“普通の人”の顔も持つ、奥村ユズルさん、62歳です。 【画像】「へんな人」をもっと! 奥村さんの作品を画像で見る
◆第一印象はとっても普通の人
「階段が滑りやすいから、気をつけてね」。 取材の日、静岡市葵区の自宅兼アトリエに筆者を案内してくれた奥村さん。初対面の印象はとても穏やかで、普通のおじさん。これまで会った超老芸術家の面々とは、少し雰囲気が違うのです。 玄関を入ると、最近力を入れている「へんな人」が一列に並んで出迎えてくれました。やはり普通の人ではないのか… 高齢になってから突如アートの才能を爆発させる人、高齢になっても情熱が枯れるどころか、より激しさを増して創作活動に没頭する人を「超老芸術家」と呼びます。 テレしずWasabeeは超老芸術の名付け親でアーツカウンシルしずおかの櫛野展正さんが発掘した、プロではないが、もっと光があたるべき人たちをシリーズで紹介します。
◆ユズルを探せ?!
「へんな人」シリーズが強烈なインパクトを放っていますが、奥村さんの創作活動のスタートは外国の建物をテーマにした穏やかな絵画です。 学生時代から世界各国を旅するのが趣味で、旅先で見た建物を描きます。 奥村ユズルさん: 必ず杖をついた老人、車イスの人、天使、クロネコ、太陽を入れるのを決まりにしているんです。最近はボーダーシャツを着てリュックを背負った自分も書き込んでいます。コロナで旅行に行けなくなってしまったので、絵の中で旅をしているんです 絵を見ている人がキャラクターを探して楽しめる、「ウォーリーを探せ」ならぬ「ユズルを探せ」というわけです。
◆原色に魅せられて
奥村さんの制作スタイルは少し変わっています。右手には筆、左手には絵の具のチューブを持ちパレットを使いません。つまり色を混ぜることなく、チューブから直接とって塗ります。 「混ぜると色が暗くなってしまうから」というのがその理由。 ビビッドで明るく。実物に近づけることよりも、楽しかった思いを表現したいから、色は鮮やかなのです。 旅先の絵を描くときには、しばらく時間が経ってからとりかかります。その間に、旅の楽しかった思い出がより浄化され、楽しさの純度が増していきます。