枕が高いと脳卒中になる…?千鳥ノブらお笑い芸人が罹患!40代男性に多い「殿様枕症候群」の危険性
そんな特発性椎骨動脈解離の危険因子として、研究チームが着目したのが「枕」だった。患者の一部が極端に高い枕を使っていたことに気が付いたのだという。そこでチームは、発症時の枕の高さを患者約50人と他の病気の患者約50人について分類して研究。すると、高さ12㎝未満の低めの枕を使っていたグループでは、同疾患の患者は約4割だったのに対して、高さ15㎝以上の枕を使うグループではなんと約9割をこの病気の患者が占めていたという。 さらに、こうした関係を詳しく調べ、枕の高さと病気の発症リスクが関連していることを突き止めた。枕が硬いほど、関連性が顕著なことも分かった。 「椎骨動脈は頸椎の骨の穴を通っているので、枕が高いと首が曲がって引っ張られ、損傷してしまう可能性がある。枕が関係しているというのはそういうことかもしれません」 前出の佐野医師もそう頷く。 日本には、「殿様枕」と呼ばれる高く硬い枕が17~19世紀に使われていた歴史がある。髪型を維持するのに有効だったとされ、名前は“殿様”だが広く庶民の間にも流通していたようで、時代劇にもたびたび登場するが、正直、首がつらそうで安眠は難しい代物に思える。 実際、1800年代の複数の随筆には、「寿命三寸楽四寸(12cm程度の高い枕は髪型が崩れず楽だが9cm程度が早死にしなくて済む)」といった言説が流布していたとの記載が出てくる。どうやら、当時の人々も、高い枕と脳卒中との隠れた関連性を認識していたらしいのだ。 国立循環器病研究センターの研究チームは、何気ない睡眠習慣が脳卒中の重要危険因子になることが世に広く認識され、脳卒中で困る患者が少しでも減ることを期待し、「殿様枕症候群」というキャッチ―なネーミングで注意喚起を促した。 従来、脳卒中の予防には、「高血圧、脂質異常症、心疾患、糖尿病といった主要なリスク因子となる疾患の早期発見と管理に努めること」「運動不足を改善するため、週に5日以上、30分以上の運動を心がけること」「ストレスや喫煙、飲酒、脱水などに注意し、健康的な生活を送ること」等が大切と言われてきたが、今後は、「あまり高くない、柔らかめの枕で寝ること」も推奨されるようになるだろう。 取材・文:木原洋美
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