「福神漬けが無い」ささいなきっかけで…無視、話を聞かない“サイレントモラハラ”も精神的DVに
内閣府の窓口に2022年前半に寄せられたDV相談のおよそ6割は精神的DVを含んだ内容だった。「精神的なDVは最終的に身体的暴力につながる」と指摘する栗原理事長は、今回の法改正についてこう評価する。 「加害者が『精神的なものもDVなんだ』と気づくきっかけになる。身体的暴力や物を壊すといった行為だけがDVだと認識している人が理解できれば、被害を受けてうつ病になる人や PTSDを発症する人が少なくなるのでは」
4月から施行される改正DV防止法で保護命令が出される範囲となるものについて、内閣府は、相手の自由や名誉、財産などに対する脅迫を例に挙げている。配偶者やパートナーが外出しようとすると怒鳴ったり、仕事を辞めさせると脅したり、キャッシュカードや通帳を取り上げると告げたりするような行為も該当する。
改正DV防止法と「脅迫」について、精神科医の木村好珠氏は「診察していると、自分がDVをしていると認識している加害者は少なく、なぜ自分のことをわかってくれないのかと思っていることが多い。身体的暴力と違って言葉の暴力などは基準が難しく、けんかした後に無視してしまったりする時にどこからがDVなのかという基準も人によって異なっているため難しい。そのため加害者本人が気づいておらず、むしろ被害者であると認識していることが非常に多い」と、精神的DVを認識することの難しさを指摘する。 とはいえ、精神的DVで受ける心の傷は大きい。 木村氏は「精神的DVの被害者も多く来院するが、被害者は精神的にかなり疲弊しており、また脅迫もされているため『自分が悪いんじゃないか』と考える傾向にある。さらに、脅迫の中には『家にいるように』『そんなに遊びに行ってどうする』など、周囲との関係を断つように仕向けるものもある。そうやって対人関係にも影響を及ぼす場合、被害者はどんどん孤独になる。孤独の辛さ、脅迫の辛さ、DVの辛さがあると『相手とコミュニケーションをとって状況を変えよう』という気力はなくなってしまう。状況を打開するような行動を起こせない人が非常に多い」と実情を語った。 さらに、どこからがDVなのか? という判断が難しい場合について、「暴力であれば殴られたらDVと分かるが精神的DVについては被害者側も『自分が悪いのか、それともDVなのか』と分かりにくいことがある。DVの相談内容のうち、精神的DVに該当するものは64.8%とのことだが、これ以上に、いわば「隠れ精神的DV」もいると思う。さらに、精神的DVが身体的なDVと複合してしまうことも少なくない」として、外部に相談することの必要性を指摘した。 木村氏は「『これがDVなのか分からない』と思った場合には周囲に相談してほしい。話せる人がいなければ、相談窓口などでSOSを出してほしい。心が消耗している状態では、集中力・判断力が低下してしまうため、まずは外部に『判断を仰ぐ』ことが大切だ」と述べた。 ◆DVの電話相談(24時間受付) DV相談+ 0120-279-889 DV相談ナビ #8008 (『ABEMAヒルズ』より)