YouTubeと TikTokの出現は必然だった…ひとりの天才学者が遺した「野生の思考」というヒント
あらゆるSNSがブリコラージュ
レヴィ=ストロースの提唱した「野生の思考」は、農耕や牧畜、陶器や土器などを生み出した基にある思考形態であり、「科学的思考」と対立するものではありません。それは不変の「構造」を保持しながら、要素を解体し再構成する過程を繰り返すブリコルールの思考形態です。そうであれば、「野生の思考」は私たちの精神の奥底に潜んでいるだけでなく、いまにも踊り出そうとウズウズしているはずです。それは、論理だけではなく、直観を重視して生きています。「野生の思考」は、私たちの中に息づいているのです。 世界中のインターネットのサイトをハイパーテキストでつなぐWorld Wide Web(ワールド・ワイド・ウェブ)は今日、私たちが経験する現実に大きな影響を与えるだけでなく、政治や経済を変える大きな力をも持っています。またSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)だけでなく、YouTubeやTiktokなど、次から次へと新たな仮想空間が生み出されてきています。それらは、すでに世の中に存在していた言葉や画像、動画を解体して再構成し、どんどんと新しいモノを生み出し続けています。 これらは、レヴィ=ストロースの言うブリコラージュであると言えるでしょう。その意味で、現代人の私たちもまた、ブリコルール(器用な人)なのです。 通信革命の進行とともに、リアルとヴァーチャルのあわいで展開するものづくりは、「野生の思考」に支えられています。20世紀に構造主義ブームが起きてから60年が経った現在においてもなお、私たちは「野生の思考」を目撃し、経験しているのです。 さらに連載記事〈なぜ人類は「近親相姦」を固く禁じているのか…ひとりの天才学者が考えついた「納得の理由」〉では、人類学の「ここだけ押さえておけばいい」という超重要ポイントを紹介しています。
奥野 克巳