新興国債の下げ加速、トランプ関税懸念-米国債利回り急伸で魅力低下
(ブルームバーグ): 新興国市場の現地通貨建て債券の見通しが悪化している。利下げ観測の後退、関税や貿易戦争を巡る懸念の高まり、ドル上昇が背景にある。
ブルームバーグの現地通貨建て新興国債券の指数は10月初めから3.5%下落し、年初来の上昇率は2%未満に縮小した。トランプ氏の米大統領選勝利以降、下げが加速している。同氏が掲げる「米国第一主義」政策は新興国市場に打撃を与えるとみられており、同氏の経済政策はドルと米国債利回りを押し上げている。
GAMAアセット・マネジメントのグローバルマクロ担当ポートフォリオマネジャー、ラジーブ・デメロ氏は「現地通貨建て新興国債への信頼を失いつつある。新たな貿易戦争の可能性が高まっていることで、新興国通貨が下落し、利下げペースが遅れることが見込まれるからだ」と指摘。「米財政赤字の拡大見通しに伴う米国債利回り上昇は、新興国の現地通貨建て債券の利回りにも上昇圧力をかけている」と述べた。
トランプ氏の政策がもたらし得る影響への懸念から、新興国市場全体で利下げ観測が後退している。ブルームバーグ集計したデータによると、新興18カ国・地域の1年物スワップ金利の指数は10-12月(第4四半期)に入り16ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り上昇し、四半期ベースで約1年ぶりの大幅上昇となる見通しだ。
トランプ氏の大統領選勝利を受けてドルが急伸したことで、新興国の中央銀行は低迷する自国通貨を支えるため、利下げを先送りせざるを得なくなるとの観測が強まっている。
資金流出の恐れ
米国債利回りの急伸で新興国資産から資金が流出する恐れがあることも、新興国債の見通し悪化の背景にある。9月半ばに3.60%まで低下していた米10年債利回りは、今月15日には4.50%に上昇。アナリストの間では、今後数カ月で5%を超えるとの見方が強まっている。
フェニックス・カレン氏(ロンドン在勤)らソシエテ・ジェネラルのストラテジストは8日発表の調査リポートで、米国債利回りの上昇が続けば、新興国債への資金流入を圧迫する公算が大きいとの見方を示した。