Mrs. GREEN APPLEがスタジアムツアーを完走。約15万人、1人1人に届けた愛と感謝
Mrs. GREEN APPLEが、デビュー前から開催し続ける自主企画「ゼンジン」シリーズを、今回はスタジアムツアー「ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~」として、兵庫・ノエビアスタジアム神戸2daysと神奈川・横浜スタジアム2daysの計4公演で開催。トータル約15万人を動員したツアーファイナルが、7月21日に横浜で行われた。 【全ての写真】Mrs. GREEN APPLEがトータル約15万人を動員したスタジアムツアーファイナル公演(全14枚) これまでにも、アリーナやドーム(埼玉・ベルーナドーム)といった大規模公演を成功させているMrs. GREEN APPLEだが、今回は会場がスタジアムで野外ということもあり、また違った新たな雰囲気を開演前から楽しませてくれた。この日、少し早めに横浜スタジアムに到着すると、既に会場周辺には通称“JAM'S”と呼ばれるファンがたくさん集まっており、いち早く入場しようというよりは、スタジアムの周辺や隣接する公園で休みながら、ツアー限定のコラボフード&ドリンクを楽しみ、フォトスポットや、メンバーのイラストと一緒に撮影ができるスマートフォン用ARを利用して記念撮影を行うなど、ライブがはじまる前から特別な1日を楽しんでいる様子だった。 さらに足を延ばしてグッズ会場の大さん橋ホールへ。横浜スタジアムからは徒歩20分程度の場所だが、その途中(日本大通り駅周辺)には横浜の歴史的建造物が立ち並んでおり、ここでもグッズTシャツを身にまとったファンたちが見学をしたり、オープンカフェで談笑する姿も見受けられた。肝心のグッズ会場は、横浜港を一望できる客船ターミナルで、ここでもウッドデッキでグッズタオルを掲げて記念撮影したりと、横浜スタジアムから続くエリア全体に“ミセスフェス”的な雰囲気が漂っていた。もちろん、体力的/時間的にそれどころではなかったJAM'Sも多かっただろうが、「暑かった!」という思い出も含めて、ライブ前からお祭り的な演出がはじまっているようでもあった。そんなことを考えながら、大さん橋とその周辺をしばし散策した後、再び会場の横浜スタジアムへ。前日(20日)夜は天気の心配もあったようだが、この日は雨の心配はなさそうだ。そして18時30分、オンタイムでライブがスタートした。 本レポートの冒頭で、「ゼンジン」はMrs. GREEN APPLEの自主企画シリーズであることを紹介したが、そもそも自主企画とは、読んで字のごとくアーティスト自身が自主的に企画するライブのこと。バンド経験者は知っているだろうが、一般的に若いインディーズバンドの場合、ライブハウス側がイベントを組み、その企画やコンセプトに見合うバンドとして声をかけられるなり、応募するといった形でライブへ出演することが多い。対して自主企画は、バンド側が能動的に企画を練り、日程や内容、出演アーティスト等をすべて自分たちで決めてライブを開催する。 Mrs. GREEN APPLEは、2013年5月20日に初ライブ(通称“青リンゴの日”)を行ったことがよく知られているが、約1年後、2014年7月5日に初の自主企画「ゼンジン未到とコンフリクト ~前奏編~」をキャパシティ230人の渋谷LUSHで開催。会場限定でインディーズでの1stミニアルバム『Introduction』を発売するなど、早い時期から自主的な活動を展開していた。それから今年で10年。昨年末にレコード大賞を受賞し、スタジアムを観客で埋め尽くすクラスのアーティストになっても、彼らは「ゼンジン」にこだわり、それを行い続けている。その理由はどこにあるのだろうか。想像するに、意識的か無意識なのかはわからないが、バンドの存在が大きくなり、周囲の環境がどう変わろうとも、自分たちの足元をしっかりと見つめ直すものとして「ゼンジン」にこだわり続けているのではないだろうか。自分たちの本質を見失わず、信じるべきものを見誤らずにいられるか。大森元貴(Vo, G)、若井滉斗(G)、藤澤涼架(Key)にとって、それはおそらく信頼のおける仲間たちと楽器を奏で、アンサンブルし、歌い、それを観客の1人1人に届ける行為に立ち返ることで、歩むべき道を進み続けようとしているのではないだろうか。つまり、ライブだ。 それならば、Mrs. GREEN APPLEは他にも数多くのライブを行っているじゃないかと思うかもしれない。だが大森がたびたび公言しているように、彼らのライブにはいくつかのライン(コンセプト)が存在し、それぞれで異なる表現手法が取り入れられている。例えば、昨年開催したアリーナツアー「NOAH no HAKOBUNE」やドームライブ「Atlantis」のように、ライブに物語性を持たせたエンターテインメント性の高いストーリーラインや、YouTube限定で公開された「Studio Session Live」のように、楽曲のメロディと歌詞をより深く表現するために、バンドという形態を超えた新アレンジでパフォーマンスを行うもの、また、FC会員限定で開催された「The White Lounge」ツアーに代表される極めてコンセプチュアルに作り込まれたミュージカル風/音楽劇風のラインに加え、音楽ジャンルの枠にとらわれずに新しいアーティストたちと多彩なコラボレーションを展開する「Mrs. TAIBAN LIVE」のラインもあると言えるのではないだろうか。