新NISAに惑わされるな…「一般人は、まず借金を返済したほうがいい」と経済ジャーナリストが説く訳
世界情勢や政治が不透明で不安定な今…自ら「情報収集」や「判断」はできるのか?
これまでの運用資産への非課税優遇をさらに拡大する制度「新NISA」が’24年から始まる。 【絵に描いた餅!?】ヤバい…?「資産運用シミュレーション」に騙されてはいけない… 長く続いたデフレ経済では、資産を運用せず預金にするだけでもよかったが、物価が上昇するインフレ時代を迎えて、預金は資産価値が目減りしていく。そんな状況で、新NISAの活用に乗り遅れるな、といわんばかりに、一般人に投資を促す話があちこちで大流行だ。 プロの投資家であれば、経済や投資環境に関係なく、常にどんな投資をすればいいのかを考えるのだろう。一方、経済や投資知識の乏しい一般人がいま、投資するのにふさわしいタイミングなのだろうか。 何十年という期間で運用するなら、状況を少し冷静に見極めるタイミングがあってもいい。一般人にとって、いまはそういうタイミングなのかもしれない。 ◆「長期投資なら大丈夫と言われても、相場は必ず右肩上がりになるわけではありません」 「日本の株価は’24年前半にかけて下落し、後半に持ち直す可能性があります」 こう話すのは、みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介・主席エコノミスト。投資環境については当面、慎重に見極めてもいいかもしれないという見方が、専門家からも出ている。 これまで貯蓄中心だった一般人が、資金を投資に振り向けることについて、経済ジャーナリストの荻原博子さんは、こんな見方をしている。 「投資は安定した環境で、正常な金融市場でするものです。いまは、どれをとっても不安定です。新NISAを利用した長期投資なら大丈夫と言われても、相場は必ず右肩上がりになるわけではありません」(荻原博子さん・以下同) 株式市場については「非常にゆがんでいます」と、荻原さんは指摘する。 日本の株式市場で大口の投資家といえば、金融政策の手法としてETF(指数連動型上場投資信託受益権)で株を大量に買い入れている日本銀行のほか、年金基金(年金積立金管理運用独立行政法人)、そして外人投資家だ。これら投資家の存在感が大きく、株式市場で個人投資家の影が薄い。 「そこに一般人が新NISAで呼び込まれることになります。特に、外人投資家などプロは逃げ足も速く、勝ち逃げされて、一般人が取り残されることになると罪深い」 荻原さんは、いまの世界情勢や政治が不透明で不安定になっていて、「投資する状況なのか」と疑問を持っている。 たとえば、ウクライナ戦争は泥沼の状態になっている。イスラエルとパレスチナの対立を受けて、スエズ運河に通じる紅海で、アラビア半島南部のイエメンの反政府組織「フーシ派」がイスラエル寄りとみている商船を攻撃するなどで、国際物流への影響が懸念されている。日本の政治に目を向けると、政権の支持率が低下しており、先行きの不透明感が強まっている。 一般人は投資をするよりも、借金を抱えている人が多く、荻原さんは「まず借金を返済したほうがいい」と話す。特に、住宅や教育などのローンを抱えている働き盛りの世代を意識している。