「完全に出遅れている」児童ポルノめぐる日本の“実態” 英国BBCが“規制されない”セックスドール工場の存在も放送
規制およばない児童ポルノの抜け道
ここまで見てきた児童ポルノは、映像メディア、印刷メディアによって製造、提供され、所持されるもの、つまり視覚に訴えるものに限られています。が、そこからこぼれ落ちるものも少なくないと思います。 たとえば、セックスドール、セックスロボットといわれるもののなかに、その姿態が10歳前後~10代半ばの子どもにしか見えないものも存在しています。イギリスの放送局BBCによる『Sex Robots And Us』という番組では、司会を務める男性が日本のセックスドール工場を訪れました。そこで彼が目撃したのは、子どもの体つきをしたリアルなセックスドールです。 工場長は「このドールが何歳かは、ユーザーの想像に任せている」「これは日本国内でしか販売しない」とコメントしましたが、司会の男性は架空とはいえ子どもが性対象とされていることにいたたまれなくなったのか、工場の外に出て涙を拭います。 イギリスでは、本物の女児そっくりのセックスロボットは輸入が禁止されているといいます。対象となっているのは、主に日本や中国、香港で製造されているロボットです。オーストラリアも同様の輸入禁止例が出ています。 どれだけ幼く見えても、工場長のいうとおり日本の市場では堂々と流通できます。児ポ禁止法はこうしたセックスドールを対象にしていません。しかし、これも現実の加害行為のトリガーとなることは間違いないでしょう。ほかにも男性向けの性玩具では、幼い女の子を想起させるものが多数、販売されています。 アメリカでは2018年から、本物の女児そっくりのセックスロボットの輸入禁止が議会で審議されているそうです。こうしたロボットが子どもを性対象とする者たちの性的欲求を抑制するのに役立ち、現実の子どもを守る手段として有効だという声はアメリカでも上がっているようですが、専門家は「それを裏づける科学的な根拠はない」といい、さらに「女児のセックスロボットは小児性愛者の歪んだ性的嗜好を助長し、倫理的な感覚を麻痺(まひ)させ、より病的な嗜好へと導くリスクがある。決して放置すべきではない」と語っています。 イギリスでは、違法に輸入された女児型セックスロボットを大量に押収した結果、それまで当局が把握していなかった小児性愛障害者の特定につながったという報道もありました。 このように世界では、子どもへの性的嗜好を持つ者が児童ポルノに慣れ親しむほど、その関心をより強化する可能性が高いと明らかにされつつあります。それと比べ、日本は完全に出遅れているといえます。 いま現実の被害児童を出している児童ポルノを厳しく規制するのは、当然のことです。それと同じくらい、これから被害者を出すかもしれない非実在の子どもを描いた児童ポルノにも厳しい視線が向けられるべきではないでしょうか。
斉藤章佳