くい打ち不正問題、安全性の確認はどうやって行うのか?
旭化成建材がマンションの杭打ちデータを改ざんしていた問題で、同社は11月24日、不正のあった物件が360件におよぶと発表、翌25日には国土交通省がそのうち97の物件名を公表した。今後、各物件では安全性の確認が本格化することになる。一体、具体的にはどのような作業が行われるのだろうか。
条件により、施工記録から安全性を判断
11月25日に開かれた「基礎ぐい工事問題に関する対策委員会」(委員長・深尾精一首都大学東京名誉教授)の第3回目の会合は、くいの支持層への到達を確認する方法について、国交省側が提出した案を了承した。これによると、問題となっているすべての物件でボーリング調査を行うわけではなく、以下の場合は現地の地盤調査を経ずに、施工記録などから安全性を判断する。 (1)支持層がおおむね平坦で、他のくいの施工記録などから不正のあったくいの支持層の深さが確認できる (2)地盤調査や電流計以外の施工記録で不正くいの支持層の深さが確認できる (3)不正くいについて施工段階で発注者などが立ち会ってチェックした記録がある ただし、施工記録などによって、くいの到達した深さが確認できることが前提となっており、それらの記録がない場合は、くいが支持層に到達しているかどうかを確かめる地盤調査を求めていくという。 委員会が了承した確認方法について、室蘭工業大学工学部の土屋勉教授は、同委員会に所属しておらず詳細はわからないと断りつつも、「くいが地盤に達していないがごまかされたものなど、悪質な場合はきちんと地盤調査を行わねばならないが、不正のあった物件数はかなりの数にのぼり、専門家が資料を見れば安全性を確認できる場合もあると見られることから、現実的な判断ではないかと思う」との見解を示す。
地盤調査なら大掛かりに
地盤調査が必要となった場合、具体的にはどういった方法が採用されるのだろうか? 土屋教授によると、たとえば、地盤の固さや土の質を調べるための「標準貫入試験」の実施が考えられるという。この試験では、ボーリングで堀った穴の底にサンプラーという棒状のものを立て、その上からおもりを落とす。これにより、地盤の固さを測るとともに土を採集する仕組みだ。この試験を行う設備は、結構大掛かりなものになる模様だ。 ほかには、「オートマチックラムサウンディング」という方法がある。これは、砲弾のような形をしたコーンを棒状のロッドに取り付け、その上からハンマーを落として地盤の固さを測るというもので、ボーリングによる穴は不要ながら、標準貫入試験と同程度の結果が得られる。ただし、測定できる深さは、標準貫入試験よりも浅い。 これらの試験によって、支持層の深さがわかる。使用されたくいの長さと照らし合わせて、支持層に到達しているか否かを確認するのではないかと土屋氏は見ている。さらに、くいの長さについて記された資料が見つからない場合でも、実物のくいには長さや製造した工場などの情報が印字されていることから、そこを見れば、くいの長さが判明する公算が大きいという。 一方、実際の調査では難点も予想される。土屋教授は「建物の端にあるくいでなければ、調査は難しいかもしれない」と指摘する。工場のように天井が高ければ試験設備を設置できるが、そういう建物ばかりではない。地盤調査が必要となった場合、建物の種類に応じてどのような調査を行うのかが、課題の一つとなりそうだ。 (取材・文:具志堅浩二)