「多重下請けの底辺」しわ寄せ及ぶ軽トラ運送業者、深夜も電話に追われていた義父の遺志継ぎ起業 マッチング・プラットフォームで挑む「2024年問題」
インターネット通販の市場拡大が続く中、配達のラストワンマイルを支えているのが軽トラックで運送業を営む自営業者だ。物流業界では、来年春から残業規制が強化され運転手が不足する「2024年問題」への懸念が高まっている。大手運送業者が荷物をさばききれなくなれば、多重下請け構造の底辺に当たる軽トラックの運送業者にしわ寄せがいき、過重労働に陥ったり交通事故が増えたりする恐れがある。 こうした課題の解決につながると期待されるのが、ITを活用して荷主と軽トラックの運送業者を直接つなぐ「ピックゴー」だ。このプラットフォームの運営を手がけるCBクラウド(東京)の松本隆一最高経営責任者(CEO)=(35)=は元航空管制官で、急死した義父の遺志を継いで起業した異色のベンチャー経営者。そもそも仕事を選ぶ余地が少なく、労働生産性も低いとされる軽トラック運送業者の社会的価値をどう上げるのか。物流変革への挑戦が続いている。(共同通信=松尾聡志)
【※この記事は、記者が音声でも解説しています。共同通信Podcast「きくリポ」を各種ポッドキャストアプリで検索してください→足音迫る日本の「届かない」未来 「2024年問題」の解決策は】 ▽独学で習得したプログラミング技術を生かす CBクラウドが運営するピックゴーは、2013年9月に他界した松本さんの義父の事業が源流になっている。松本さんによると、義父は横浜市で自動車の販売店と整備工場を経営。その傍ら「テイヘン」という会社も手がけ、軽トラックの冷蔵・冷凍車を販売した約30の自営業者に運送の仕事をあっせんする事業をしていた。社名は多重下請け構造の「底辺」から付けられていた。 当時の運送業界の慣習として、仕事の受発注は電話が中心。荷主からの電話を取り損ねたら、その仕事は他の業者に回されてしまう。このため、義父は深夜も電話に追われる生活を送っていたという。 松本さんは航空管制官として羽田空港で勤務しながら、休日は高校時代に独学で習得したプログラミング技術を生かして義父を手伝っていた。義父といっても、当時はまだ交際相手の父親という立場だったが、「娘と結婚しなくても事業は一緒にやってほしい」という言葉に心を動かされ、松本さんは2013年8月に航空管制官を辞めた。