室戸小で行われた海洋深層水に関する出前授業

　国内初となる「海洋深層水サミット」が、17～19日まで高知県室戸市で開催された。 　同市は1989年（平元）に日本で初めて海洋深層水が取水された。今回は高知県が企画。18日には地元のほか、静岡県、富山県といったほかの取水地の自治体、沖縄・久米島で事業を行っている企業の担当者などが参加し、活用促進につなげようというパネルディスカッション、最新の研究成果の発表などが行われた。 　高知県はこれまで海洋深層水を使った飲み物、食品など1800点以上を商品化し、現在も約300点の関連商品があるという。富山県でも経口補水パウダーなど550商品があり、認知や拡大が進んでいるとの報告があった。静岡県からはキンメダイの人工種苗、ウナギの育成、藻場を増やすなどの例が挙げられた。 　また、久米島からは低温の海洋深層水を生かした発電によるエネルギー自給、「あたらないカキ」を育てる陸上養殖などで産業を振興し、雇用の創出を図る「久米島モデル」について報告もされた。 　海洋深層水には「低温安定性」「富栄養性」「清浄性」という特徴がある。これを生かした飲食事業、エネルギー産業などがどこも主力になっている。今後は地球温暖化による海面温度の上昇のため、生息域が変わった魚類を育てるといった事業も可能になりそうだ。 　18日には会員が普及活動のため、地元室戸小の5年生を対象に出前授業も実施。深層水を表層の海水と分離して水槽に入れ、これをコーヒーサイホンの要領で抽出してくみ上げたら、冷たい氷のような深層水と自分の手のひらの体温との温度差を利用して発電し、プロペラを回すという実験を行った。児童からは、「海洋深層水で農作物や海産物が育つ」「電気を作ることで世界が変わる」といった発言が出て、スタッフを驚かせた。 　海洋深層水利用学会会長である大阪公立大の大塚耕司教授（61）は、「深層水を利用が第1段階とすれば、どんな効果をもたらすかが第2段階。今はその先の第3段階として、これらのメカニズムの解明というフェーズにさしかかっている。健康、エネルギー、第1次産業などを通じて、理解してくれる人口を増やすことが課題」と話した。 　19日にはメンバーが同市で行われたイベント「海洋深層水フェスタ」や、「室戸世界ジオパークセンター」を訪れ、懇親や理解を深めていた。