ジャニーズ裁判は「同じ証言でも裁判官が違うと…」松本人志VS文春 裁判での気になる「今後の展開」
お笑いコンビ『ダウンタウン』の松本人志が1月22日、性的行為を強要されたなどと主張する2人の女性の証言などを掲載した12月27日発売の『週刊文春』の記事を名誉毀損として約5億5000万円の損害賠償を請求して、発行元の文芸春秋社と『週刊文春』編集長を東京地裁に提訴した。 【美女が向かった先は】…松本人志「キャバ嬢風の女性とホテルへ」お持ち帰り写真 『週刊文春』編集部は同日に 《一連の記事には十分自信を持っています》 などとコメントを発表。全面対決の裁判闘争に突入することになった。 裁判はどう展開するのか――。 これまで何回も名誉毀損裁判の傍聴や取材をしたことがあるが、名誉毀損裁判には表現の自由と名誉毀損の調整をするものとして「免責三要件」があり、要約すると 「記事が公共の利害に関する事実にかかわるものであり、もっぱら公益を図る目的で出た場合には、適示された事実が真実であると証明されたときにはその行為に違法性がなく、不法行為は成立しない。 また、その事実が真実であると証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるに相当な理由がある時には、その行為には故意もしくは過失がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当である」 という解釈が定着している。 記事にある「性加害」問題は、公共性や公益性は認められると予想され、真実性・真実相当性が証明されれば損害賠償請求は棄却され文春側の勝訴となる。 逆に裁判官が記事に真実性、真実相当性がないと判断すれば、文春側に一定額の損害賠償が命じられ、松本側の勝訴となる。 松本は「性的行為」そのものを否定していることから、裁判では性的行為があったかどうか、さらには女性に対する性的強要があったかが争われることが予想される。 第1回公判では松本側の訴状に対して文春側が反論する準備書面を提出するか、または争うことだけを表明して次回に準備書面提出となることが予想される。 1ヵ月半ぐらいの間隔のペースで裁判が進行して、お互いに準備書面で主張しあい、関係者の証言を記した陳述書などを提出して争うが、カギを握るのは性的行為を強要されたと主張している女性の証言と予想される。双方の主張を裁判官がどう判断するのかが注目される。 ちなみに故ジャニー喜多川氏の性加害を報じた’99年の一連の文春のキャンペーン記事をジャニーズ事務所(現:SMILE-UP.)が名誉毀損で提訴した裁判について、裁判を担当した“文春の守護神”といわれる喜田村洋一弁護士が、月刊『創』のインタビュー記事 「『週刊文春』裁判でジャニー氏は何を証言したのか」(’23年10月13日配信) で詳しく語っている。 それによると、少年2人が法廷でジャニー氏の「ホモセクハラ」を証言したが、1審の東京地裁判決では、記事の中の性被害の部分は真実性・真実相当性がないとして文春側が敗訴して損害賠償を命じられた。ところが控訴審で東京高裁は一転して記事の 「重要な部分では真実であるとの証明があった」 として文春側が実質的に勝訴。ジャニーズ側は上告したが、最高裁は上告を棄却して高裁判決が確定している。 裁判官によって同じ証言の判断が分かれるというケースもある例で、単純に今回の裁判に当てはめることはできないが、予断を許さない展開が続く可能性がある。ジャニーズ対文春の裁判は提訴’‘99年11月)から最高裁判決(’04年2月)まで約4年3ヵ月かかったという。 名誉毀損裁判では双方が主張を尽くしたところで裁判官から和解勧告が出て、判決を待たずに和解(和解内容は非公開)するケースもあるが、今回の裁判は途中での和解は考えにくく、仮に1審判決を不服としてどちらかが(あるいは双方が)控訴して、さらに最高裁まで続くとなると、4~5年はかかることが予想される。松本は1月8日に 「様々な記事に対峙して、裁判に注力したい」 として芸能活動休止を発表したが、裁判の間活動休止を続けるのかも注目される。 いずれにしても松本と文春の長い裁判闘争が近くスタートすることになった。 昨年社会的に大きく問題になったジャニー氏の性加害問題をきっかけに、企業が性加害や人権問題に積極的に取り組み、またメディアも積極的に報道するようになっている。それだけに、今後の裁判の行方が注目される――。 文:阪本 良(ライター、元『東京スポーツ新聞社』文化社会部部長) Webマガジン『PlusαToday』を始め、芸能、映画、ハリウッド情報などの記事を執筆。日本映画ペンクラブ会員
FRIDAYデジタル