WBC侍ジャパンに大谷翔平がいれば米国に勝てたのか?
あと1試合を残して侍ジャパンのWBCが終了した。準決勝の米国戦では1-2の惜敗。菊池、松田の守備のミスが勝敗に直結したが、菅野、千賀ら投手陣が踏ん張ったものの、つまるところ打てなかったのが最大の敗因だった。本当に日本の野球は米国に劣るのか。考察するときに、ふと頭をよぎるのが、足首の故障で出場を辞退した日ハムの“二刀流”大谷翔平が、もし侍ジャパンにいたら、どうだったのか?という仮説だ。 元星野ジャパンのチーフスコアラーで現在、岡山商大で特別コーチをしている三宅博さんは、「打者・大谷がいれば、もしかすれば勝てていたかもしれませんね」という。 米国戦の日本は、動くボールの対策に苦しんだ。先発のロアークに対してはツーシームに悩まされた。 その立ち上がりにユニホームを掠るようなラッキーな四球で山田が出塁、菊池がバントで得点圏に送るが、青木は、バットの根っこ、筒香も148キロのツーシームを打たされレフトフライ。 二回にも一死から坂本が、ピッチャー強襲の内野安打で出塁するが、松田はツーシームの餌食にあって、三塁ゴロ併殺打に倒れた。ナショナルズで、昨季16勝10敗。エースのシャーザー、ストラスバーグに続くローテーション投手であるロアークに4回まで手玉に取られ、5回からは細かな継投策をとられ、動くボールに加え、タイミングのとりつらい変則フォームのネイト・ジョーンズや、ニシェクが出てくると目先を変えられ、菊池にソロアーチが生まれただけで、ますます対応ができなくなった。 象徴は1-2で迎えた8回二死一、二塁の場面。筒香が打席に立つと、米国は、変則右腕のニシェクをワンポイント起用してきた。3年連続で60試合以上に登板している年俸約7億円のセットアッパーで今季からはフィリーズでプレーする、ここまで無失点の中継ぎの切り札である。 筒香は初球のチェンジアップにタイミングを崩され空振りをすると、ストレートでカウントを整えられて、最後も、チェンジアップ。打球の角度は良かったがバットの先だった。 9回に出てきたグレガーソンは大きく曲がるスライダーが、いわゆる特殊球。最後のバッター、松田がスイングアウトしたそのスライダーは、バットと大きくかけ離れていた。 試合後、小久保監督は、「球が動く威力やスピードがワンランク上だったので、なかなか芯で捉えることができなかった。メジャーの動くボールへの対処は難しいと感じた」と、悔やんだ。 1次、2次ラウンドの対戦相手も動くボールを使ってきたが、150キロ前後のスピードで動かすようなレベルのピッチャーはいなかった。アリゾナで2試合行ったカブスとドジャーズとの強化試合で、「動くボール対策」を、現実課題として突きつけられ、「センターから逆方向へ」という意識を徹底していたはずだったが、ほとんどの打者が、強引に引っ張って動くボールの罠にはまっていた。おそらく逆方向を意識するとボールが速過ぎてついていけなかったのだ。WBC球が一層重たく感じたのだろう。 強化試合で対戦したカブスのマドン監督が「足をあげてタイミングを取るバッターが多い」と、動くボールに対応できない日本人打者の決定的な弱点を指摘していたが、しっかりと身についてしまっているスタイルを1日や、2日で変えるような器用な真似はできない。