『光る君へ』渡辺大知の行成が魅力的過ぎる 一条天皇の心を動かす説得力
吉高由里子主演の大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)。公式サイト内には出演者の撮影現場からのコメントが聞けるキャストインタビュー動画「君かたり」が公開されている。第28回「一帝二后」の放送後には、藤原行成役の渡辺大知、一条天皇役の塩野瑛久、ききょう役のファーストサマーウイカ、そして藤原定子役の高畑充希が登場した。 【写真】行成(渡辺大知)の言葉に思わず目を瞑る一条天皇(塩野瑛久) 道長(柄本佑)は入内させた娘の彰子(見上愛)を中宮にし、定子(高畑充希)と后を二人にする「一帝二后」をもくろんでいた。その目的は国家安寧のためであり、詮子(吉田羊)や行成(渡辺大知)が一条天皇(塩野瑛久)の説得にあたるのだが、一条天皇は定子を想うあまり、決心がつかない。 そんな第28回では、行成が意を決して一条天皇に進言する場面がある。行成は道長のことも一条天皇のことも慕っている。そのため、行成は道長と一条天皇、双方の気持ちが分かるからこそ板挟みとなり、苦悩してきた人物だ。そんな行成は、彰子を中宮とすることで定子を傷つけたくないと打ち明ける一条天皇を前にして、自分自身の考えをはっきりと述べた。 この場面での渡辺の表情は魅力的だ。一条天皇の定子を想う気持ちは痛いほど理解しているし、道長が国家安寧のために政に励み、苦労を重ねていることも知っている。だが、道長の良きサポート役として立ち回る行成は、一条天皇の気持ちは理解しつつも、政ではなく定子を優先する一条天皇の立ち居振る舞いによって世が乱れることを憂いていたはずだ。覚悟を決め、意見を述べる表情には、行成がこれまで表に出してこなかった自分自身の思い、政に向き合う彼の芯の部分が感じられた。加えて、渡辺が発した厳しい台詞やはっきりとした台詞の言い回しには、一条天皇の心を動かすだけの説得力があった。 渡辺はインタビューにて、この場面について「今まで一条天皇と道長さんの間でずっと揺れ続けていて、行成の思う政治だったり、行成の思う一条天皇の気持ちのくみ取り方だったり、それを押し殺しながら仕事をしてきたと思うんですけど」「一条天皇の気持ちがわかってしまうからこそ苦しいところもあったんですけど、それを自分の心を鬼にして、言わなければいけないところをことばにしたっていう感じですかね」と話している。 また、渡辺は行成を演じるうえで「行成は自分の主張よりも、道長さんの望みをかなえるためにはどう自分が動くべきかっていうことを考えていたり、一条天皇の気持ちをどうくみ取ってあげることができるかっていうことだったりを考えながら、政治の中で自分の役目を果たそうとしている人物だなと思っている」と語った。 渡辺は、行成が自分のことばを発する際、役職を全うするフィルターみたいなものをかけているイメージがある、ともコメントしている。そのイメージを意識してきたからこそ、一条天皇との場面では「(そのフィルターみたいなものから)解き放たれたような感じになったらいいなと思ってやっていましたね」と話した。渡辺が演じるうえで意識したところは、存分に効果を発揮していたように思う。行成らしい穏やかな佇まいはそのままに、普段とは少し異なる声色と厳しい面持ちで苦言を呈する行成は魅力的に映ったからだ。 行成が自分のことばで話す機会はそうそうないのかもしれないが、ぜひ今後も、渡辺が語った「役職を全うするフィルター」をかけていない行成の姿を見てみたい。
片山香帆