ウナギ完全養殖の実験成功から8年、実用化時期のめどは立ったのか?
実用化時期のめどは立っていない
── 今後の目標を教えてください。 奥村 人工シラスウナギの大量生産の実現を目指しています。日本で養殖に使われる天然のシラスウナギは年間に約1億尾ですが、このうち少しでも人工のシラスウナギに置き換えるのが目標です。 ── 実用化の目標時期は? 奥村 現在の技術では、まだシラスウナギの大量生産は難しく、コスト的に合いませんので、さらなる研究が必要です。実用化の時期のめどは、まだ立っていないのが現状です。 ── 2010年に完全養殖に成功してから8年。いまだ実用化のめどが立たない理由は? 奥村 実験に時間がかかることがおもな要因としてあげられます。ニホンウナギの場合、卵がふ化してシラスウナギにまで生育するのに、二百数十日から三百日ほどを要します。実験1回につき、約1年かかることになります。また、ウナギの仔魚の飼育は、マダイやブリといった他の魚の仔魚を飼育する際に使うエサが使えないなど、まったく新しい技術を確立する必要があります。 ── 17日には、人工シラスウナギを民間の養鰻業者に無償提供すると発表しました。 奥村 鹿児島県の養鰻業者2社に、人工シラスウナギを150尾ずつ提供します。2社は、人工シラスウナギ専用の池を用意して試験的に養殖。体重や体長、生存した成魚の数などのデータを当機構に提供してもらいます。成魚は市場では販売しません。当機構の人工シラスウナギを、民間の養鰻業者に養殖試験用として提供するのは、今回が初めての試みです。 ── どのような成果を期待しますか。 奥村 人工シラスウナギを、民間の養鰻業者の池で育てた場合、どのように成長するのか、それを知るための貴重なデータが得られると期待しています。シラスウナギの大量生産の実現という目標に向けた足がかりになると考えています。 (取材・文:具志堅浩二)