【米政権交代】 トランプ政権のウクライナ政策は…次期大統領はプーチン氏と電話会談と米紙報道
米紙ワシントン・ポストは10日、ドナルド・トランプ米次期大統領がロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話で会談し、ウクライナでの戦争をエスカレートさせないよう促したと報じた。トランプ陣営はこの報道について、「コメントしない」とBBCの取材に答えた。 他方、ジョー・バイデン政権幹部は、バイデン大統領が近く次期大統領と会談する中で、ウクライナ情勢について意見交換する方針だと米CBSニュースに話した。バイデン政権は今後、欧州やアジアの安定を見据えて、ウクライナから手を引かないことの重要性を議会や次期政権に強調していく方針という。 この間、トランプ陣営の元関係者はBBCに、トランプ政権はウクライナに対して、ロシア占領下の領土を取り戻すことより和平を重視するよう働きかける方針だと話している。 ■トランプ次期大統領、プーチン氏と会談か ワシントン・ポストによると、トランプ次期大統領は7日、当選から初めてプーチン大統領と電話で会談。フロリダ州の自宅マール・ア・ラーゴで次期大統領は、プーチン氏にウクライナでの戦争をエスカレートしないよう促し、欧州に相当な規模の米軍が配備されていることに言及したと、消息筋が話したという。 同紙によると、両氏はさらに欧州大陸での平和実現という目標について話し、トランプ氏は「ウクライナでの戦争を近いうちに解決」することについて協議するため、今後も会話を続ける意欲を示したという。 BBCはこの報道内容を独自に確認できていない。 トランプ陣営のスティーヴン・チャン広報担当にBBCが取材したところ、「トランプ大統領と各国首脳の、プライベートな会話について、我々はコメントしない」という回答を得た。チャン氏によると、複数の世界首脳が次期大統領に次々と接触してきているという。 他方、ウクライナ政府筋によるとトランプ次期大統領は8日、マール・ア・ラーゴから、電話でウクライナのゼレンスキー大統領と会談した。 ウクライナ大統領府の消息筋はBBCに対して、「トランプ次期大統領との電話に、イーロン(・マスク氏)も参加していて、彼に電話を渡した。そこでゼレンスキー大統領は(マスク氏に)スターリンクについてお礼を述べた」のだと話した。 会話の雰囲気について消息筋は、「普通で、仕事をするという空気で、良い会話だった」と話した。 「マスク氏とのやりとりは短かったが、トランプ次期大統領との会話はずいぶん長かった。30分は続いた」という。 マスク氏が所有する宇宙開発企業「スペースX」の通信衛星システム「スターリンク」は、遠隔地でも高速インターネットの使用を可能にする。ウクライナでは2022年2月にロシアによる全面戦争が始まって以来、戦地で欠かせない通信手段になっている。 ■現政権の補佐官、欧州とアジアの安定に言及 バイデン政権のジェイク・サリヴァン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は10日、米CBSニュースの番組に出演。バイデン大統領が13日にトランプ次期大統領をホワイトハウスに迎える際、「欧州とアジアと中東で何が起きているかを含め」、「内政と外交の最重要課題」についてひとつひとつ話し合う予定だと述べた。 ウクライナについては、「アメリカはウクライナから手を引くべきではないと、バイデン大統領は今後70日間で連邦議会と次期政権を説得していく」とサリヴァン補佐官は述べた。 「ウクライナから手を引けば、それは欧州の不安定が増すことになる。そして究極的に、日本の総理大臣が指摘したように、もし我々が欧州でウクライナから手を引けば、アジアの同盟諸国を支える我々の姿勢を疑問視する声も高まる」ことになると補佐官は話した。 サリヴァン補佐官は、バイデン大統領が「自分の任期終了後も、アメリカはウクライナへの支援を継続する必要がある」と議会および次期政権に強調していくと説明。「戦場や交渉の場で何があっても、ウクライナへの脅威は残る。そしてアメリカはウクライナを支えるコミットメントから手を引くべきではないし、ウクライナ防衛のために作り上げた欧州とアジアの50カ国へのコミットメントからも引くべきではない」と述べた。 サリヴァン氏は、すでに議会承認を得ている残り60億ドル分のウクライナ支援は、次期政権が来年1月20日に発足する前に実行するとも説明。任期満了までの間にバイデン政権としては、「ウクライナが戦場においてできる限り強い立場でいられるようにする。それは、ウクライナが交渉の場でできる限り強い立場でいられるようにするためだ」とも話した。 ロシアのプーチン大統領はこれまで和平協議の前提条件として、ロシア占領下にある領土をウクライナが手放すことを要求している。ウクライナ政府はこれを拒否する姿勢を徹底して示している。 サリヴァン補佐官は中東紛争については、ガザ地区とレバノン南部で戦闘を終え、イスラエル組織ハマスが人質にしているイスラエル人の解放へ向けて、取り組みが前進するだろうとして、「イスラエル政府はどこかの時点では、市民の帰還につながる合意を求めるはずだ」と話した。 ■トランプ陣営の元関係者は トランプ陣営の顧問だったブライアン・ランザ氏はBBCに対して、次期政権はウクライナについてゼレンスキー大統領に「和平への現実的なビジョン」を求め、ウクライナが失った領土を回復することより、和平実現を重視するはずだと話した。 ランザ氏はBBCに、「もしゼレンスキー大統領が交渉の場に臨んで、クリミア半島が戻らない限り平和はあり得ないなどと言えば、真剣ではないと示すに等しい。クリミアはもう戻らない」と話した。 これについてトランプ移行チームの広報担当は、ランザ氏はトランプ次期政権を代弁する立場にないと、同氏の発言から距離を置いた。 他方、かつてトランプ政権で働いた匿名の国家安全保障会議(NSC)関係者は6日、米紙ウォールストリート・ジャーナルに対して、「(次期大統領が)ウクライナについて何をどうするつもりか、周りより詳しく自分は知っているなどと主張する人間は、トランプ陣営の中でどれだけ地位が高いとしても、たわごとを言っているに過ぎない」、「これまでも何度もそうだったように(次期大統領は)国家安全保障の問題については自分で判断して決める」のだと話している。 (英語記事 Biden to urge Trump not to walk away from Ukraine, US security adviser says / Trump ally says Ukraine focus must be peace, not territory)
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