「NHKスタッフが号泣」佐藤弘道、下半身麻痺から3か月の番組収録での“感動”と意外な反応をした人
将来に不安を抱えた状態で、決して楽ではないリハビリを続けるということは、誰しも心身への負担になる。中にはうつになってしまう人もいるというが、さすがは体育会系の佐藤さんだ。
「足が動かない分、疲れも大きい」
「7月にリハビリ病院に入って12月末が退院目標だったのですが、『僕は1日たりとも長くここにいるつもりはありません』と医師に告げ、実際、入院して3週間後に退院しました。自宅に戻り、手すりをつけず、あえて不便な生活の中で動くことも大きなリハビリになると、医師も賛成してくれたのです」 しかし、まだスムーズに歩ける状態ではなかったため、家族の不安は大きかったという。 「実際、自宅に戻ると大変でした。家族がいないときに、ひとりで食事や片づけ、着替えをするのは簡単ではなく、足が動かない分、疲れも大きいのです。でも少しずつ、できることが増えていき、今は車の運転もできるようになりました」 持ち前の運動神経のおかげで回復が早い佐藤さんだったが、普通に歩いているように見えても、走ることはできない。混雑する中で人をよけることも難しいため、立ち止まって相手が通り過ぎるのを待つしかない。 「取得したヘルプマークをカバンにつけています。例えば、災害が起きて避難しなくてはいけないときでも走ることができないので、誰かの手をお借りするためにもヘルプマークが役立つと思いました」 9月に行われた『おかあさんといっしょ』放送65周年特番の収録には、当初は参加できないと思っていたものの、サプライズで登場することに。歩いて現れた佐藤さんに、一緒に活動した茂森あゆみさんをはじめ、スタッフまで関係者は大号泣状態だったという。 「でも(はいだ)しょうこちゃんはいつものままで、『キャー! ひろみちお兄さん!』ってはしゃいでました。彼女らしくて面白かったですね」 病気を患ったことで佐藤さんの人生観は大きく変わったという。 「歩けることが当たり前ではないと気づいて、感謝の心を持てるようになりました。人に優しくなり、妻には以前よりも『穏やかになった』と言われます。 この病気はまだあまり知られていないので、僕が啓発する立場にもなりたい。そして、不安を抱える立場にいる人たちを支える側にもなれるよう、リハビリを続けていきます」 取材・文/紀和 静 さとう・ひろみち 1968年生まれ、東京都出身。日本体育大学体育学部卒業。'93年4月よりNHKの教育番組『おかあさんといっしょ』第10代体操のお兄さんを12年間、2005年4月より『あそびだいすき』(NHK Eテレ)を3年間務める。'02年に子どもと指導者のためのスポーツクラブを立ち上げ、幼稚園・保育園・こども園の正課体育および課外体操教室で指導。'15年、弘前大学大学院医学研究科博士課程修了。親子体操を通じて親と子の健康について調べ、日本初の「親子体操博士」となる。