ヘイリー氏撤退 米大統領選「候補者指名争い」における「3つのポイント」
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が3月7日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。米大統領選の候補者指名争いについて解説した。
米大統領選・共和党の指名争い、ヘイリー元国連大使が撤退を表明
米大統領選の野党・共和党の候補者指名争いで、ニッキー・ヘイリー元国連大使は3月6日、撤退を表明した。ヘイリー氏の撤退を受け、トランプ前大統領が共和党候補指名を獲得。11月の本選で民主党の現職大統領バイデン氏と再び対決する可能性が高まった。
米大統領選・候補者指名争いでの3つのポイント
宮家)結果自体は驚きませんが、スーパーチューズデーが終わって、我々が見なければいけないことは3つあります。第1はなぜトランプ氏が勝ったのか。第2はヘイリー氏の負け方がどんなものだったのか。第3は、バイデン氏の勝ち方はどうだったのか。この3つをしっかりと見なければいけません。
なぜ、トランプ氏が勝ったのか ~アメリカの経済構造の変化による「白人の怒り」を上手く吸い上げた
宮家)まず、なぜトランプ氏が勝ったのかと言うと、一般に理由は「白人男性・ブルーカラー・低学歴の怒り」だと言われており、確かにそれも間違いではありません。しかし先日、面白い記事を読みました。アメリカは昔であれば農業はみんな手作業で行っていたのですが、技術革新で機械化が進み、知的産業が次々に都市で誕生した。その結果、田舎が荒廃してしまった。というのです。 飯田)田舎が。 宮家)ところが、田舎には多くの白人の農民や、都市で働く中堅労働者がいます。アメリカにはいま、ダウンタウンにいる少数派の人たちと、郊外にいる少しお金持ちの人たちがおり、彼らは白人も非白人もいます。また、田園地帯に住む多くの白人もいて、その都市、郊外、田舎の3つがそれぞれ地殻変動を起こしているのです。その論文によると、田園地帯の白人たちが最も苦労している。その怒りを上手く吸い上げたのがトランプさんだと言うのです。そうだとすると、トランプさんが勝ったのは単に「白人が怒っている」というだけではなく、アメリカの社会や経済構造そのものが大きく変わった結果なのだと思います。 飯田)トランプさんが勝った理由は。 宮家)トランプさんは、それをたまたま上手く使ったのでしょう。逆に言うと、トランプさんがいなくなっても、そうした流れや現状は変わらないので、今後はトランプさんよりももっとタチの悪い人が出てくる可能性すらあります。実際にそのような記事が既に出ている。トランプさんの支持者のなかから、若い後継者、もしくはそれに続く人を育てようという動きもあるようです。つまり「トランプ運動の再生産」が始まっているのですよ。個人的には恐ろしい話だなと思っています。これが「なぜトランプ氏が勝ったのか」という問題です。