女傑ファインモーションを差し切った!「GⅠ」を予感させたクラフトワークの走り/2004年・函館記念
【記者が振り返る懐かしのベストレース】“負け組”の中に逸材が潜んでいても勝ち馬のその後は案外…これが夏場のローカルハンデ重賞でよくある図式だ。デキのよさやコース適性が結果を大きく左右し、能力差を埋めてしまう。函館の名物重賞・函館記念でも後にマイルGⅠを制するトロットサンダー(95年7着)、トウカイポイント(02年14着)、アサクサデンエン(03年12着)が完敗。対照的にこれらを負かした勝ち馬はGⅠとは無縁だった。 【表】懐かしの馬名が並ぶ2004年函館記念結果 しかし、中にはGⅠを感じさせる“勝ちっぷり”を見せた本格派もいる。04年の覇者クラフトワークに秋の天皇賞制覇の夢を託したのは記者だけではないだろう。 3歳時にもGⅡ青葉賞3着→GⅠダービー9着と素質の片鱗をのぞかせた大器がついにベールを脱いだのは4歳夏のこと。クラス再編成で準オープンに降級したが、復帰戦に選んだのはGⅢ戦。決して適鞍がなかったわけでもオリンピック精神だったわけでもない。好結果はそのままGⅠ戦線での物差しとなり、かつ賞金も加算される。秋の天皇賞への最短ルートが函館記念だったのだ。 格好の基準となったのがファインモーションの存在。57キロのハンデを背負ったとはいえ、GⅠ2勝の現役最強牝馬を倒せばGⅠ制覇への視界は大きく開ける。レースでは荒れたインコースを苦にせずメンバー中最速35秒6の末脚を繰り出したクラフトが快勝。並ぶ間もなくファインを差し切った時に一流馬の仲間入りをしたはずだった。 「今までも強敵相手に走っていた馬。数を使っていない分、成長が期待できるし順調ならば当然楽しみ」。テン乗りだった横山典が体感した乗り味は結局、GⅠで試されることはなかった。重賞2勝を上乗せしたものの、左ヒザ骨膜や股関節痛で以後はGⅠ不出走。06年のGⅡ毎日王冠が最後のレースとなってしまった。(2008年7月23日付東京スポーツ掲載)
東スポ競馬編集部