『【推しの子】』連載完結間近 「アイドル」「POP IN 2」ら楽曲群、SNSを席巻した背景を振り返る
新生B小町「POP IN 2」、メタ的な“面白さ”を生んだバズ
重ねて、アニメ視聴者であれば周知の通り、今クールで物語の主題はアイの息子・アクアから彼の妹・ルビーの復讐劇へと一度大きく転換する。今後のストーリーでもその復讐の意志を発端とし、アイドル活動に執念とも呼べる意欲を燃やし始めた結果、摩耗していくルビーの様子が物語の一部として描かれる。何かに苦しむような表情で、それでも再度立ち上がり駆け出す彼女の姿を「burning」とともに描いたED。その映像は制作決定したアニメ第3期への布石となっており、先の展開を知る者であれば、この演出に物語の連続性を感じた人もいたに違いない。 作品の世界観や命題を多彩な角度から切り取った主題歌各曲。それらに加えて最後に言及しておきたいのは、劇中挿入歌としてアニメ各期でサプライズ的にお披露目された、作中アイドル・B小町による楽曲群だ。 「STAR☆T☆RAIN」「HEART's♡KISS」、そして作詞曲を業界屈指のヒットメーカー・大石昌良が務めた「サインはB」。第1期で公開された該当曲に加え、直近放送の第2期で待望の新生B小町初のオリジナル曲として公開された「POP IN 2」も、すでに立派なキラーチューンへと大きく変貌を遂げている。 公式発信のあった振付動画ほか二次創作動画などの拡大の影響もあってか、楽曲MVはYouTube公開から1カ月で1,700万回再生を記録。作中展開と酷似するバズをすでに巻き起こしており、動画コメント欄にはまるでB小町が実在するような体で書き込まれた内容が多数散見される点も非常にユニークだ。 架空の物語へ沿う展開になりつつある現実に対し、ある種メタ的な“面白さ”が生まれるのは、ひとえに作品そのものの現代社会や若者たちに対する観察眼/描写力が突出しているからに他ならない。その点でも、現在のマンガ界における特異点として唯一無二のストーリーを描いてきた『【推しの子】』。物語を現在進行形で彩り続ける楽曲群とともに、復讐劇の終着点もぜひ自身の目で見届けてほしい。
曽我美なつめ