「最後の砦なのに… 司法はおかしい」最高裁の決定に青木さんが憤り…冤罪の母親が国などに賠償求めた裁判 最高裁が上告を棄却し国の賠償責任最後まで認めず
1995年に大阪市東住吉区で11歳少女が焼死した火災をめぐり、放火や殺人に罪に問われいったんは有罪となったものの、再審で無罪が確定した母親が、大阪府と国に損害賠償を求めていた裁判。 府の責任のみを認めた1審・2審の判決を不服として、青木さん側が上告していましたが、3月28日、最高裁が上告を棄却しました。 国の責任は認められなかった結果に、青木さんは「最高裁は刑事裁判を変える機会を棒に振った。司法はおかしい」とコメントしています。
青木惠子さん(60)は、1995年に当時の同居男性とともに、大阪市東住吉区の自宅に火をつけ長女(当時11)を殺害したとして、いったんは無期懲役の有罪判決が確定し服役しましたが、再審=やり直しの裁判が行われた結果、2016年に無罪が確定しました。
再審で無罪が確定「過度の精神的圧迫を加える取り調べで、虚偽の自白をせざるを得ない状況に」
直接証拠は同居男性と青木さんの自白のみで、その任意性や信用性が争点となった事件でしたが、再審請求審で裁判所は、青木さんについて「過度の精神的圧迫を加える取り調べが行われ、虚偽の自白をせざるを得ない状況に陥ったとの疑いが認められる」と断定。 さらに、科学的実験などを踏まえ「車の給油口からガソリンが漏れ出たことにより、自然発火で火災が生じた可能性が残る」と判断しました。同居男性も、再審で無罪を言い渡されています。
1審・2審は府(警察)の責任は認定も…検察(国)の責任は認めず
青木さんは、大阪府警と大阪地検の捜査や起訴などが違法だったとして、大阪府と国を相手に、約1億4600万円の賠償を求め提訴。 1審の大阪地裁(本田能久裁判長)は2022年3月の判決で、当時の警察官の取り調べについて、「社会通念上相当と認められる方法や限度を明らかに越えていて、違法」と断じ、大阪府の賠償責任を認定。約1200万円の賠償を命じました。 一方で、大阪地検の責任については「検察官が自白の任意性・信用性の欠如を、容易に認識できたとまでは断定できない」「万全の捜査が行われたとは評価できないことを踏まえても、起訴時点ではその時点での証拠を考慮し、合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があったというべき」として、起訴などが違法だったとはいえないと判断。国の賠償責任は認めませんでした。 この判決を不服として青木さんと大阪府は控訴しましたが、去年2月、大阪高裁(牧賢二裁判長)が控訴を棄却していました。
最高裁が上告棄却決定 青木さん「最高裁も最後の砦なのに刑事裁判を変える機会を棒に振った」
大阪府は上告を断念したものの、青木さん側は最高裁に上告。しかし最高裁(岡正晶裁判長)は3月28日付けで、上告を棄却する決定を出しました。これにより、国の賠償責任を認めない判決が確定しました。 判決確定を受け、青木惠子さんは「警察をチェックできないなら検察なんかいらない。最高裁も最後の砦なのに刑事裁判を変える機会を棒に振った。司法はおかしい」とコメントしています。