『虎に翼』ハ・ヨンスが可視化する“透明化された人々” “愛の裁判所”設立へ正念場の寅子
寅子(伊藤沙莉)を導く多岐川(滝藤賢一)の鮮烈な言葉
その上で、いま寅子にできることはあるのか。多岐川の答えは明快だった。「どうするか決める権利は全て香子ちゃんにある」と多岐川は言う。「助けてほしくても、そう言えない人だっているんじゃないでしょうか?」と食い下がる寅子に、多岐川は「じゃあ、この国に染みついている香子ちゃんへの偏見を正す力が佐田君にあるのか?」と問いかけた。 昼あんどんの多岐川の言葉は稲妻のように鮮烈で、まるで滝に打たれるようだった。多岐川は、単に「できないことを口にするな」と言っているわけではない。香淑が背負っているものを重々承知した上で、多岐川は寅子に対して、自らができることに注力するよう求めた。「君が家を出てから家に帰るまでの時間は、家庭裁判所設立のために使いたまえ」。なぜなら「今この日本には愛の裁判所が必要」だからである。 そう言いつつも、各地にある少年審判所と家事審判所の協議は難航していた。そんな折、花岡の妻の奈津子(古畑奈和)が寅子を訪ねてくる。花岡を助けられなかったことを詫びる寅子に、奈津子はチョコレートのお礼を伝えた。闇米に手を出さなかった花岡は妻と子どもの笑顔を喜び、寅子に感謝していたのだ。桂場(松山ケンイチ)の一言で寅子は現実に引き戻される。家裁設立のタイムリミットまであと2カ月だ。
石河コウヘイ