「虐待だとは思っていない」…子どもたちの心身に深い傷を与え続ける大人からの「しつけ」の正体
暴力、ネグレクト、貧困―。さまざまな理由から自分で子育てができない親たちがいる。ジャーナリストの草薙厚子さんは、そうした親子の取材を長年続けている。 【マンガ】「一緒にお風呂入ろ」母の再婚相手から性的虐待を受けた女性の「罪悪感」
警察が児相に通告した子どもの数は12万人
昨年1年間で、警察が児童相談所に「児童虐待の疑いがある」と通告した18歳未満の子どもの数は12万2806人(暫定値)。幼い子どもが犠牲になる凄惨な事件も多く、引き続き社会的関心が高まっている。 『子どもを育てられない親たち』(イースト・プレス)を上梓したジャーナリストの草薙厚子さんは、少年鑑別所、児童相談所で職員として働き、多くの子どもたち、そして家族に関わってきた。 同書では2017年に起きた「目黒女児虐待事件」、2018年の「千葉・野田小4女児虐待事件」など、記憶に残る凄惨な事件を振り返るとともに、草薙さんが児童相談所で対面してきた「子どもを育てられない親たち」の事例を紹介している。なかでも、特に危機感を募らせているのが虐待問題だ。 「親や保護者からの虐待は、身体的、精神的、性的なものだけではありません。一見するとどこにでもあるようなごく一般的な家族に見えましたが、ある子どもは習い事を過剰につめこまれ、勉強を強制されるといった『教育虐待』を受けてきたケースもありました」
虐待をしていると思っていない親
「実は健常児として誕生していても、虐待を受けた子供たちは『脳の傷』によって発達障害の基準に類似した症状を示します。成長するにつれて自己嫌悪、自殺願望、アルコール依存症、薬物依存などの症状を引き起こしたり、さらには自分の子どもに対しても同じように虐待行為を引き継いでしまうこともあります。虐待は子どもたちの心身の成長、および人格形成に多大な影響を与えるという研究結果が出ているのです。 発達障害のような症状がある保護者らは子どもに対し、『育てにくい』と感じ、また、配偶者からの育児協力が得られなかったとき、親たちは孤立し、育児ストレスを溜め、その矛先は再び子どもへ向かうこともあります。相手とうまくいかなくなったときに子どもを疎ましく思ったり、反対に新しい恋人ができたときに邪魔に思うようになったり……自分の思い通りにならない子どもの存在に対して、関心を失い、時にそれは暴力となって牙をむくのです」 そこに輪をかけて深刻なのが、親の無意識だ。 「多くの保護者は自分が『虐待をしている』とは思っていないのです。『しつけ』と信じて行った暴力や暴言は『虐待』にあたり、子どもたちの心身の発達を妨げることを知らなければなりません」 虐待問題を減らすため、草薙さんが一貫して訴えていることがある。生みの親にとらわれない「養育環境」の改善だ。 子どもを育てるのは実の親でなくてもいい。実の親からの凄惨な虐待の末に命を落とした子どももいるのだ。 後半記事「子どもは「実の親」が育てなくてもいい…『虐待は普通の家庭で起きている』元児相職員ジャーナリストが訴える『子どものほんとうの幸せ』」では実態について、さらに掘り下げていく。
週刊現代(講談社)
【関連記事】
- 【つづきを読む】子どもは「実の親」が育てなくてもいい…「虐待は普通の家庭で起きている」元児相職員ジャーナリストが訴える「子どものほんとうの幸せ」
- 「うるせえ、ババア!」…生活保護を受ける「酒浸りの母親」が育児放棄…それでも保護された子どもを母親の元に戻した、児童相談所「驚きの判断理由」
- 「学校の評価が下がる」「虐待とかしてないですよね?」小3息子の不登校に悩む母親が学校に言われた残酷すぎる言葉
- 「子どもから大人まで異様に増え続ける発達障害」と「日本社会のヤバすぎる特性」...正常な人が「異常」扱いされるのは日本だけ
- 「自分が本当に虐待されているように錯覚して…」日本アカデミー賞最年少受賞の「天才子役」が芸能界を去った「本当の理由」