18歳・小田凱人が全仏連覇「大道芸みたいなテニスがしたい」ローランギャロスを魅了
◆テニス ▽全仏オープン 第14日(8日、パリ・ローランギャロス) 【パリ8日=吉松忠弘】パリ・パラリンピックでの金メダルが見えた! 車いす男子シングルス決勝で、世界ランキング2位の小田凱人(ときと、18)=東海理化=が、自身初の4大大会2連覇を達成した。同3位で2019年優勝のグスタボ・フェルナンデス(30)=アルゼンチン=に7―5、6―3で勝ち、4大大会通算4勝目を挙げた。全仏はパリ・パラリンピックと同会場で、自身初めてのパラリンピック出場での金メダルが濃厚となった。三木拓也(35)=トヨタ自動車=と組んだ同ダブルスは敗れ、2冠はならなかった。 勝った瞬間、両手を突き上げた勢いで、車いすが赤土の上でくるくる回った。それほど強い勝利への思いが小田からあふれた。「本当にタフだった。昨年、人生で一番、うれしい日だったが、それが(今年)更新された。またパラリンピックで戻ってくる」。再び人生最高の日が訪れた。 第1セット5―2でセットポイントを3本握った。しかし、それを逃すと、5オールに追いつかれた。第11ゲーム、劣勢からジュースに追いつき、4本目のブレイクポイントをものにしたのが大きかった。第1セットを7―5で奪うと、第2セットも突き放した。 シングルス決勝が、まさかの14番コートだった。昨年の決勝はセンターコートで、今年も「そこ(センター)のつもりでやってきた」。ダブルスの準決勝はセンターに入り、この日の決勝も確信し「バッグも車いすも(センターに)置いてきた」。しかし、その屈辱を「今度は(センターに)入れないとダメだと思わせよう」と力に変えた。打つ直前にくるっと1回転してウィナー(決定打)をたたき込むなど「ただポイントを取るだけじゃなくて、大道芸みたいなテニスがしたい」と魅せるプレーを披露した。 全仏の開催場所、ローランギャロスは、8月28日に開幕するパリ・パラリンピックで車いすテニスが戦う会場でもある。全仏は自身が初めて4大大会に優勝。また、パリには自身の名前の由来にもなった凱旋門がある。今年も7日の試合後に観光。「お参りじゃないですけど、特別な場所。パリは日本と同じくらい大切な都市」と言い切る。 髪はデザインパーマで、サングラスをかける。オレンジや黄色のパーカを羽織り、目立ちに目立つ。それも、車いすテニスのエンターテインメントだと胸を張る。車いすテニス界の革命児は、「まだ満足はしていないし、また強くなって戻って来たい」。パラリンピック開幕まで80日。光り輝く金メダルのために、特別な場所に戻ってくる。 ◆パリ・パラリンピックの車いすテニス 8月30日~9月7日に開催。下半身だけに障害があるオープン、上半身にも障害があるクアード(男女混合)にクラス分けされ、それぞれシングルス、ダブルスの計6種目で争う。出場枠は男子オープン48、同女子32、クアード16。小田はすでに出場権を確保している。なお、全米オープン車いすの部は開催期間が重なるため、今年は行われない。 ◆小田 凱人(おだ・ときと)2006年5月8日、愛知・一宮市生まれ。18歳。東海理化所属。9歳で左股関節に骨肉腫を発症し、車いす生活に。国枝慎吾氏の試合を見て、10歳から車いすテニスを始める。21年、世界ジュニアランク1位になると、22年にプロ転向。23年全仏で4大大会初優勝し、17歳1か月の史上最年少で世界ランク1位に。23年ウィンブルドン、24年全豪優勝。175センチ。家族は両親と姉、弟。趣味はスニーカー収集。
報知新聞社