政治家の「パワハラ」は「ブラック霞が関」を強化する 追及パフォーマンスの副作用とは
前日夜の質問通告が国会待機と深夜残業の元凶
質問内容を質問者の議員が省庁に事前に伝えることを「質問通告」という。「通告されていないので、すぐに答えられない」と総理や大臣が答弁している姿をテレビで見た方もいるかもしれない。この質問通告のタイミングは与野党の申合せで原則2日前の正午までに行うこととされているが、その期限が守られることはほとんどなく、前日の夕方から夜にかけて通告されることが多い。内閣人事局が全省庁を対象に行った「国会に関する業務の調査・第3回目 (調査結果)」(2018年12月28日)によると、質問通告がすべて出そろった時刻の平均は、前日の20時19分である。 国民の負託を受けた国会議員からの質問になるべく丁寧に答えようと準備するのは当たり前だが、事前通告が前日の夕方から夜にかけてなされる限り、深夜から明け方までの対応が必要になり、官僚の睡眠時間は削られ続ける。中には、役所が気づいていない鋭い質問によって政策が動くこともあるが、単なる揚げ足取りのような質問もあるし、そもそも「待機児童対策について」とか「新型コロナウイルス感染症について」など、項目しか通告してこない国会議員もいる。 そういう項目だけの通告の場合、あわせて「問合せ不可」という指示を役所にしてくることが多い。具体的に何を議論したいのか、質問者の議員に確認することもできない。そうなると様々な質問を想定して大量の想定問答を徹夜で作成することになる。何が精神的にきついかというと、こういう作業のせいで本来やらなければいけない政策を考える仕事が進まなくなることだ。 夕方から朝まで寝ずに国会答弁を作成した後、日中は本番でどんな質問が出ても対応できるように官僚は国会に同席する。夕方、役所に戻ってくると、フラフラだ。しかし、元々やらなければいけない仕事は何一つ進んでいない。そういう日々を続けると、自分の時間を国民のために使えている実感がなくなり、どんどん疲弊してくる。