世界中から注目! 京都市京セラ美術館で開幕した 『村上隆 もののけ 京都』内覧会レポート
京都市美術館開館90周年記念展『村上隆 もののけ 京都』が、京都市京セラ美術館で2024年2月3日(土)から開幕した。オープン前日に行われたプレス向け内覧会では、多国籍な関係者が集まり、日本語と英語のバイリンガルで説明が行われ、アーティスト村上隆も英語を混ぜながら挨拶した。それでは会場にレッツゴー! 【全ての画像】『村上隆 もののけ 京都』展示風景など(全12枚) 入口をくぐって、第1室にどーん! とあるのが、この《洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip》。京都の町を表現した《洛中洛外図》は、室町時代後期から多くの絵師や画家が手掛けている。村上は、岩佐又兵衛による《洛中洛外図》を元に、AIで線画するなどのテクノロジーを使って、このように緻密に描いた。画面には、京都御所、二条城、清水寺といった京都の名所のみならず、暮らしているたくさんの人々を見ることができ、圧巻! 「琳派水紋」をアレンジした床も必見だ。 スカル(どくろ)柄のカーテンに手を通し、第2室に入る。照明は作品を照らすだけの、八角形の空間となっている。 この展示室は怖いような、緊張感が漂うような空間だ。壁には、京都の町を四つの方角から守るモチーフ(東=青龍、西=白虎、北=玄武、南=朱雀)を表現した、大きなペインティング。中心には《六角螺旋堂》があり、手を合わせたくなるような立体作品も置かれている。京都といえば、雅(みやび)な宮廷文化をイメージするが、疫病や災害も多く、たくさんの人々が犠牲となっている。よく見ると、展示室の床にも、スカル(どくろ)がたくさんちりばめられている。 続いて第3室・・・・・・お? 「DOB往還期」と名付けられた第3室では、世界にムラカミの名を知らしめた、「DOBくん」や「スーパーフラット」を紹介している。他にも村上が生み出した「カイカイ」と「キキ」のような、時代とともに変遷するキャラクターは、美術作品(ペインティングや立体作品)として表現・展示しているだけではない。 グッズとなったキャラクターは、展示室の一角にあるショーケースに並べられている。つまり、大衆に消費されるグッズが美術館に置かれると、美術品として価値があるものになる、という「スーパーフラット」の考え方を具現化しているのだ。 第4室に入ると目に入るのは、《風神図》、《雷神図》。 え、ゆるキャラ?! 村上によると、これまで先人たちによる《風神図》、《雷神図》は、時代背景によって顔つきなどが違うそうだ。そこで村上が考えたのは、このような表情!2024年を生きる私たちは、これを見ると笑顔になってしまうが、何百年か後の人たちが見たとき、どう思うのだろうか。 この第4室にある、上記の作品や、琳派を想起させるような大型の新作たちは、見ごたえ十分! さらに、展示作品の元絵であるデッサンやスケッチも展示されており、とても興味深い。 第5室は、村上が手掛けるNFTやトレーディングカードといった、最新トレンドを追っている。例えば、人間の煩悩と同じ数108枚ある、この作品。 京都市の「ふるさと納税特別返礼品」である、村上の「COLLECTIBLE TRADING CARD」には、この《Murakami. Flowers Collectible Trading Card 2023》がデザインされている。アートやアーティストがふるさと納税?と驚いてしまうが、2月2日現在、3億円が集まっているそうだ。それに、美術館でトレーディングカード?! 実は、この「ふるさと納税特別返礼品」のトレカとは別で、展覧会来場者先着5万人に、限定トレーディングカードのプレゼントもある。 この第5室の作品は、一見デジタル表現に見えるが、実はカンヴァスにアクリル絵具。細部までじっくり眺めてほしい。 金色の壁面がまぶしい第6室は、京都ゆかりの作品群だ。 昨年11月の記者会見レポートでも紹介した、京都南座の「祝幕」の原画や、送り火で知られる京都五山をモチーフにした作品などが、同展最後の空間を彩る。 2024年9月1日(日)まで開かれている 『村上隆 もののけ 京都』は、村上隆というアーティストが持つ多様性や幅の広さに気付かされる展覧会だ。いま京都で生活する村上ならではの「京都愛」も感じながら、NFTやトレーディングカード、ふるさと納税を取り入れるような「時代の最先端」、そして(以下の作品にあるような)キャプションは日本語と英語のバイリンガルという「グローバル目線」を見て取れる。 おそらくこれは村上隆の回顧展ではない、と私は信じたいが、2000年以降の日本を代表するアーティスト村上隆が、この20~30年間発表してきた主な作品を日本で一通り見ることができる、超貴重な展覧会であることは間違いない。同時代に生きる者として、ぜひ見ておきたい。 取材・文:藤田千彩 <開催概要> 京都市美術館開館90周年記念展 『村上隆 もののけ 京都』 会期:2024年9月1日(日)まで 会場:京都市京セラ美術館[ 新館 東山キューブ ]