輪島市で漆職人志すも地震で研修所が被災 地元・岩手での9カ月経て再び能登へ 支援への感謝と復興へ思い
岩手めんこいテレビ
能登半島地震の発生から9カ月です。 その地震の前から石川県輪島市に住み込み漆塗り職人になるための研修に励んでいた岩手県出身の女性がいます。 被災した研修所の再開まで岩手県で重ねた日々を追いました。 黙々と板に漆を塗りこむ女性。大船渡市出身の今野風花さん(24)です。 宮城県仙台市の大学で美術を専攻するうち漆の職人を志すようになり、2023年の春から石川県輪島市の技術研修所に入って、輪島塗などの伝統技法を学んでいました。 輪島漆芸技術研修所研修生 今野風花さん 「漆が何年も長く残り続けることがすごく素敵だなと感じた。一番そこが魅力」 しかし、元日に能登半島地震が発生。 通っていた研修所は建物に亀裂が入るなどの被害を受けそのまま休校となりました。 当時、大船渡市に帰省していた今野さんは地元にとどまることを余儀なくされました。 輪島漆芸技術研修所研修生 今野風花さん 「1日の発生時は頭は真っ白でしたし、これからどうしようかなとすごく悩んで迷って不安な時期だった」 石川県に戻れない日々が続くなか、今野さんは4月、岩手県で漆塗りを再開することができました。 きっかけをもたらしたのは盛岡市で漆工房を営む松沢卓生さんでした。 2年前、当時大学生だった今野さんの作品をSNSで見たことを機に交流するようになった松沢さん。 将来を見据え、輪島で学ぶことを勧めたのも松沢さんでした。 松沢漆工房 松沢卓生社長 「輪島は日本でもトップクラスの漆芸の産地なので、そこに行って学ぶのはひとつだなと話をした」 能登半島地震の後、松沢さんは知人である花巻市の蒔絵師の商品づくりなどを今野さんに手伝ってもらえるよう環境を整備。 今野さんはブランクを最小限にとどめることができました。 輪島漆芸技術研修所研修生 今野風花さん 「松沢さんから漆の活動続けませんかと誘いをいただかなかったら、多分私は何もせずに漆に触れることもせずに9カ月間過ごしたと思う。すごくありがたいと思っている」 岩手県で漆塗りを再開してから5カ月間、今野さんは実家からの仕送りに支えられながら毎日8時間ほど作業に没頭してきました。 これまで手掛けた商品は多岐に渡ります。 地元・大船渡市の工場バンザイ・ファクトリーが手掛けるさかずき「我杯」や県内の官公庁の職員が使用するネームプレート。 さらに東日本大震災の津波で全壊した陸前高田市の県指定文化財「旧吉田家住宅主屋」の復旧作業の手伝いもしました。 江戸時代に建てられた歴史ある住宅を復旧するにあたり今野さんは引き戸の漆塗りを任されました。 この日は松沢さんの紹介で岩泉町の家具職人・山口一夫さんの指導を受けた今野さん。ムラなく漆を塗り重ねる技術を学びました。 輪島漆芸技術研修所研修生 今野風花さん 「研修所にそのまま通い続けられたとしても、こっちで人とのつながりはできなかったと思うので、すごく大きいこと」 岩手県で懸命に制作活動を続ける中、うれしい知らせが入りました。 輪島の研修所が10月から授業を再開することになったのです。 断水は解消し研修生用の仮設の寄宿舎も整えられました。 9月の豪雨の影響で少しずれ込みましたが10月7日から再開されることになりました。 輪島漆芸技術研修所研修生 今野風花さん 「素直に戻れることがうれしい。こんなに早めに戻れる環境を整えてくれて(輪島の)職員には感謝の気持ちでいっぱい」 輪島に戻れる日が来たことに松沢さんも胸をなでおろしています。 松沢漆工房 松沢卓生社長 「数少ない岩手出身の漆の若手なので期待している。将来岩手戻って来れるなら岩手で花開かせて色々やってほしい」 輪島漆芸技術研修所研修生 今野風花さん 「人生の一部としてもいい経験ができた9か月間だったと思う。色々ご支援いただいた感謝と復興への思いを込めてやろうと今している」 能登半島地震から9カ月、復興へと歩む輪島に戻ることになった今野さん、 岩手県で過ごした日々を糧として、一人前の職人になるための修行に励みます。
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