死も時間制限もない“穏やかな終末世界”をバンで巡ろう SFアドベンチャー『Caravan Sandwitch』レビュー
Studio Plane Toastが開発した『Caravan Sandwitch』をプレイした。本作は、急激な開発によって環境に甚大な問題が起きたシガロという惑星を舞台に、失踪した姉を探すために6年ぶりに故郷へ帰ってきた少女ソージュが各地を冒険するSFアドベンチャーゲームである。 【画像】穏やかな終末世界を描く『Caravan Sandwitch』のスクリーンショット スタイライズドされたグラフィックで描かれた美しい世界や、死のトラップも制限時間もなく、のんびりと自分のペースで楽しめるところが魅力的な反面、物語やゲームプレイにおいてやや単調さを感じる部分もあった。ではレビューに入っていこう。 ■廃れゆくコミュニティに活力を取り戻せ 本作は、ソージュという女の子が、姉ガランスの失踪を自動メッセージで受け取るところから始まる。彼女はスペースシティという都会の星に暮らしていたが、姉を探すために6年ぶりに故郷シガロの土を踏む。そこはコンソーシアムという団体が急激な開発をしたのちに撤退したことで、巨大な嵐や酸の海などの環境問題に悩まされていた。 荒れた環境に身を寄せる人間たちの小さなコミュニティで、ソージュは幼い頃に遊んでもらった老婆からバンを譲り受ける。彼女は久し振りに会う父親や友人たちとの軋轢を解消しながら、ガランスを探していく。 カエルによく似た原生生物レイネトの願いを聞いてあげたり、コンソーシアムが遺した開拓ロボットの意識データを集めてあげたりしながら、ソージュは6年間の溝を埋めていくのだ。謎の「ウィッチ」に誘われながら……。 本作の世界はスタイライズドされたパリッとしたビジュアルで描かれ、くっきりとしているが目に痛いほどではない。最近では見慣れたグラフィックスタイルではあるものの、終末が近付きつつあるという設定と非常にマッチしている。どこがインタラクトできるのか、何が落ちているのかなどがわかりやすく、見た目は申し分ない。 バンの挙動もほどよくゲーム的なウソが利いていて、操作性は良い。マップの広さ以上に旅情を感じられた。音楽も、邪魔しない程度に主張してくる優しいチューンばかりだ。 ただ、メインストーリーで用意された驚きよりも、サイドストーリーで描かれる人々の卑近な悩みの方が心に残るところはあった。とはいえ、10時間前後で堪能しきれることを考えると、これくらいのボリューム感がちょうど良かったとも言えるだろう。 個人的には、序盤に出てくる、穴倉のなかでガラクタを集めているロボットを外に解放してあげるクエストと、自分の子どもの葬儀を挙げるラマールというロボットのお手伝いをするクエストが印象に残った。こういった小さな笑いや感動を誘うクエストがもっといっぱいあったら、さらにうれしかったように感じる。 ■誰でも楽しめるイージーなアクション Steamの紹介ページ内に「死や時間制限がない」と書かれている通り、主人公はどんな目に遭っても死なないし、何かに急かされることもない(ゲーム内でその理由が語られるとさらに良かったが)。 よって、バトルもなければレベルもなく、単純にバンでマップを行き来して、人々の話を聞いて回ることを繰り返すゲームだ。寝る前に遊ぶのにちょうど良い一本と言えるだろう。 世界は終わりかけているが、クエスト内容は穏やかで、こちらの良心に訴えかけてくるような息苦しいものは排除されており、まったりとした雰囲気で遊べるのも良い。親子や友人間の軋轢を描いているものの、そこまで辛辣なテキストが出てこないのも、全体のトーンを維持できていることに一役買っている。 いわゆるギリギリジャンプや、複雑なパズルといったハードコアゲーマー向けの要素もまったく出てこないので、シビアなゲームに疲れてしまった人にこそ楽しんでもらえるだろう。 しかしそうは言うものの、障害となるのは、ドアを開けるためにスイッチを探したり、物陰に隠されたオブジェクトを見つけたり……といったものばかりなので、最初から最後まで同じような味付けだと感じてしまった。途中で別の遊びをちょっとでも挟んでくれたら、と思ってしまった。 『Caravan Sandwitch』は、バンで世界を見て回りながら、自分のタイミングで話を進められるとても穏やかなアドベンチャーゲームだった。いくばくか退屈さは感じたものの、トレーラー通りの展開が続くので、ビジュアルやセンスに惹かれた人はぜひとも遊んでみてもらいたいタイトルである。
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