故障の錦織圭 なぜ復活できたのか
一昨年の楽天オープン決勝が初対戦で、錦織が勝った。今年のマドリッドでの2度目の対戦も錦織が勝利。全試合タイブレークが絡んでおり、そのタイブレークを取ったほうが勝っている。ラオニッチは最近特にタイブレークでの自信を高めており、今季のタイブレーク戦績は23勝9敗。一方の錦織は11勝6敗である。 タイブレークはサーブ力のある者が有利ともいわれるが、今大会でのラオニッチのサービススピードは最速で時速143マイル(230km)。大会2位の記録だ。日本期待のダニエル太郎との1回戦では、セカンドサーブで時速140kmを放って目撃者の度肝を抜いた。「僕のサーブ力とストロークの決定力は相手にプレッシャーになると思う。あまり調子が良くなくても、タイブレークになればサーブに集中していけばなんとかなると期待が持てる」 3回戦でも3つのタイブレークを全て制してストレート勝ちしたばかり。タイブレークが最後の砦としてある限り、ブレークすることをあまり意識せずにサービスゲームに集中しやすい状況にある。 一方の錦織は得意のリターンゲームに賭けている。「ラオニッチのサーブは角度があり、他の選手とは違う。リターンがカギになる。少ないチャンスをどれだけ自分が生かせるかというところだと思う」。ウィンブルドンでは完全にやられたが、ハードコートなら芝ほどサーバー有利ではない。鮮やかなコントラストを放つ〈ポスト・ビッグ4〉の代表格、錦織とラオニッチ。8強入りをかけた戦いは、アーサー・アッシュ・スタジアムのナイトセッション2試合目に組まれた。それが特別な意味を持つことは、テニスをよく知る者ならわかるだろう。この一戦にテニス界の希望と期待が詰まっている。 (文責・山口奈緒美/テニスライター)