JR東日本パワハラ訴訟、原告控訴棄却も社員1人への賠償判決は維持 東京高裁
原告は上告せず判決確定
判決後、組合員約300人が参加し、参議院議員会館内で報告集会が開かれた。輸送サービス労組の佐々木宏充委員長は「いくつかの不当労働行為が認められ、会社の使用者責任も問われた。成果を踏まえ、安全で信頼できる鉄道を作り上げていくため、職場活動をしていきたい」と総括。弁護団の市橋耕太弁護士も「各地で脱退勧奨が行なわれていたのは動かない事実だ。労働団体として会社と対峙してほしい」と語った。 放出さんは「1円でも勝ち取れれば勝利だと思っていた。一部でも認められたことは不法行為の証しだ」と語った。 会社側は判決後すぐに「東京高裁は、会社は組織的な脱退勧奨等の不当労働行為を行っていないという一審判決を改めて維持した」と社員に周知。原告・組合側は27日に協議し、上告はせず「勝利判決を堅持」すると決めた。 JR東日本は人口減少などで経営環境が変化する中、社員の養成やライフサイクルを変える「新たなジョブローテーション」を20年春から実施している。従来、現業職は「駅→車掌→運転士」の順で養成されたが、これを見直し、営業、不動産部門などへ配置転換が行なわれる。鉄道事業部門は4000人規模で削減とも言われる。 一方でJR東管内では最近でも新幹線の架線が垂れ下がって運転を長時間見合わせたり、停車駅をオーバーランしたりというトラブルが起きている。輸送サービス労組は「ジョブローテーションでは技術が伝承されず、最優先すべき安全が脅かされる」と批判。さらに、異動者の半数以上が同労組員に集中(22年1月現在、同労組調べ)しており「労組差別」だと主張している。原告の1人、高橋弘樹さん(綾瀬運輸区、運転士)は「組合差別や脱退勧奨と闘い、公共交通機関にふさわしい会社に戻していきたい」と語った。
金本裕司・ジャーナリスト