164年前、日本人として初めてアメリカ大統領に会ったサムライたちは「外交贈答品」として何を選んだか
(柳原 三佳・ノンフィクション作家) 共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)が、第47代アメリカ大統領に当選しました。11月11日に第2次石破内閣を発足した石破茂首相は、この日の夜に行われた記者会見で、「トランプ次期大統領となるべく早いタイミングで直接会談する機会をもちたい」と発言。日程は未定ですが、この先の日米関係の行方に関心が高まっています。 【写真】1860年に遣米使節が訪米したとき、アメリカ大統領への贈答品として持参した掛け軸「富士飛鶴図」 ■ 「外交上の贈り物」はアート トランプ氏との会談……、と聞いて思い出すのは、8年前、ヒラリー・クリントン氏を破り、第45代アメリカ大統領に当選した直後の「ゴルフ外交」エピソードです。当時の安倍晋三首相は2016年11月17日、早くもニューヨークに駆け付け、ゴルフ好きで知られるトランプ氏に1本50万円する「黄金のドライバー」をプレゼント。トランプ氏はとても喜び、その後の会談は予定の2倍にあたる約90分間にわたっておこなわれたそうで、当時、大きな話題になりました。 さかのぼれば、安倍氏の祖父である岸信介元首相も1957年に訪米した際、当時のドワイト・D・アイゼンハワー大統領(第34代)と一緒にゴルフをして親交を深めたそうです。「ゴルフ外交」は、先々代から引き継がれていたということですね。 以下の記事にこんな一説がありました。 (外部サイト)外交で重要な贈り物、意外な事実も(AFPBB News:2014年12月25日) 『米国務省のある職員はAFPに対し、「外交上の贈り物は長い歴史を持つアートであり、多くの指導者や国々から非常に重要に受け取られるため、われわれはあらゆる状況に備えておかなければならない」と語った』 なるほど、「長い歴史を持つアート」という言葉は、まさにその通りだと感じます。
■ 日本人が初めて会った米大統領は第15代ブキャナン大統領 日本人が初めてホワイトハウスでアメリカ大統領に謁見したのは、今をさかのぼること164年前、1860年のことでした。 「万延元年遣米使節」と呼ばれている一行の目的は、日米修好通商条約の批准書を大統領と交わすことでした。幕府から命を受けた正使・新見正興(しんみまさおき)、副使・村垣範正(むらがきのりまさ)、目付・小栗忠順(おぐりただまさ)を正規の代表とする総勢77名の遣米使節団は、江戸まで迎えに来たアメリカの軍艦「ポーハタン号」に乗り込んで太平洋を渡り、パナマ鉄道や他の軍艦を乗り継ぎながら、アメリカの首都であるワシントンへと向かったのです。 本連載の主人公である「開成をつくった男・佐野鼎(かなえ)」もこの使節団に従者の一人として参加し、約9カ月間かけて地球を一周。このとき書き記していた詳細な『訪米日記』の内容は、本連載でもたびたび紹介してきました。 以下は日本の使節団がホワイトハウスで第15代のジェームズ・ブキャナン大統領に謁見する様子が描かれたイラストです。 アメリカの人々は、初めて見る東洋のサムライたちの姿に歓喜し、ワシントン、ニューヨークなどでは歓迎のパレ―ドが大々的に催されたことが記録されています。